主人公は59才で早期退職をさせられたオーヴェ。半年前に最愛の妻ソーニャをなくし、独り暮らし。無愛想で頑固な老人。生真面目に規則を守り、国産車しか乗らずに生きてきた。そんな彼が、新たに越してきたイラン人の妊婦パルヴァネ一家をはじめとした人々とやりあったりして生きていく様を描いた作品。
自分を理解してくれた唯一の妻ソーニャのいない暮らしに耐えられず、自殺をしようと何度も試みるが、その都度近隣の人々の邪魔が入り、果たせない。最後には持病の心臓病で危なくなるも、持ち直し、パルヴァネの娘たちに、おじいちゃんと呼ばれながら数年生きて、穏やかに息を引き取る。
合間合間に、彼の生きた様がエピソードとして挟まれ、彼の生い立ち、ソーニャとの出会い、事故による腹の子の死と、ソーニャの半身不随の顛末が描かれる。失意のソーニャは教員免許を取り、社会落伍者の生徒を指導する。その生徒の一人が、後にオーヴェの前に現れ、彼と付き合うようになる。
最初は取っつきにくい老人と思えたオーヴェだが、読んでいくうちに、親近感を覚え、応援したくなる。孤独な老人でありながら、真面目に生きてきた証の生活力で、回りの人々の困難を解決し、望んでもいなかった連帯を得ていく。長年不和だった隣人とも仲直り。
彼の回りをうろつく野良猫ともいつしか心を通わせ、家族となる。
孤独だった彼がいつしか、回りの人々に慕われ、頼みにされる存在になって、天寿をまっとうする。
コメディタッチなやり取りが読んでいて面白く、いつしか最後まで読んでしまう。そてでいて、生きること、他人と共存することを考えさせる作品だった。