鎌倉河岸捕物控シリーズの第三十二巻のして、完結編。
酒問屋、豊島屋の主の祝言のために京へ赴いた金座裏九代目の宗五郎一行が、江戸に戻る旅と平行して、江戸で起こる幼児誘拐事件の捜査が描かれた今作。前回に偶然にも薬種問屋に押し入ろうとした盗賊一味を留め立てして、瀕死の重症を負った亮吉は、無事快方に向かい、金座裏に戻ってくる。長年やきもきされた豊島屋で働く菊との祝言も決まりそう。裏長屋で兄弟のようにして育った政次、彦四郎、亮吉のなかで、いつまでも腰が定まらなかった亮吉が、ようやく一人前になりそうなところで、物語は終わる。
板橋宿の御用聞き仁左親分が金座裏を訪ねてきた。どうやら大店の幼児がさらわれ、大枚の身代金で取り戻すという事件が起こったらしい。被害にあった店主が沈黙していて、詳しい事情はわからないが、幼児に付き添っていた小女が一人殺された。縄張り内の事件に気づかなかったことに呵責をもち、殺された小女の敵を討ちたいとやってきた。下手人らは江戸へ潜り込んで、さらなる大金を狙っている。
折しも三味線の稽古にかよう十歳の大店の娘が怪しい視線を感じると言っているという。板橋で悪さをした一味かどうかはわからないが、政次は動き出す。十日もすれば宗五郎たちも帰る。それまでには決着をつけたいと。
後に八州様と恐れられた関東一円を管轄に取り締まる、新たな捜査機関が誕生前の時代でもある。その準備のために働く、八丁堀同心寺坂の知り合いの男、安藤も金座裏に手助けを頼む。縄張りはありながら、それを越えて助けを求められるのが、金座裏の独特な役目。
今回は、養生中の亮吉の代わりに、若い弥一が活躍する。
無事に事件も解決し、宗五郎たちが戻った祝いの席で、宗五郎は旅の間に思案してきた決意を語る。正式に隠居して、金座裏を十代目の政次に譲り渡すと。
シリーズはこれで終わる。寂しいが、長年付き合ってきた登場人物たちにも、収まりをつけて完結。まあこんなものか。