なんとも不思議な話だが、読んでいて楽しい。
地方都市の私立の博物館の学芸員に就職した沙良。父がなくなったあと、母親は幼い娘を舅姑に預けて、離縁。その後音沙汰がなくなった。
町には桜花公園があり、その公園を私財をなげうって作った槇原伝之丞という偉人がおり、銅像もたっている。公園ができた頃には、川も流れていて、そのほとりに河童明神の祠があったというが、今は川もなくなり、祠もない。
学芸員として、町歩きツアーのガイドを勤めていた沙良は、公園で大好きな猫の子と、奇妙な小人を見かける。どうもそれが、偉人である伝之丞にそっくり。三度目に出くわしたときに教えられた。彼の姿は孤独なものにしか見えないと。
偉人として現代にまで語り伝えられた彼だが、彼の家族や身の回りのものが、彼をどう思っていたか知りたい。それを調べてくれないかと頼まれた沙良。孤独でないもの二じゃ見えないとわかっていても、調べに同行する彼の存在にひやひやしながらも、いつか受け入れていく。
身代をつぎ込んで、晩年は大邸宅から長屋住まいにまで落ちぶれたことを家族は恨んでいた。無用の公園づくりは道楽でしかないと一族のものは批判した。一方、公園の存在で、身の置き所がない嫁が気を休める場所になったと感謝するものもいた。

沙良の前にいきなり現れた母は、一緒に東京へ行こうと言い出し、とまどう沙良。
イケメンと知り合い、恋の予感にときめく沙良。
母親が詐欺紛いの仕事をしていること、そのために娘が必要になったと知り、驚いたり怒る沙良。しかもあのイケメンが母の愛人と知り、泣く泣く別れを告げる沙良。
そして、博物館のオーナーが会長を勤める地元の会社社長と、その部下になった男の殺人事件。オーナーから、その調査を頼まれた沙良。
さらには、河童伝説にまつわる争いの決着が、公園で繰り広げられ、その結果、川がもとに戻り、沙良の恋が成就する。
小人が出てくるだけでもファンタジーだが、読んでいてあまり反発を感じない。平凡なヒロインの一喜一憂が、私の心にすんなり入ってくるからか。

同じ著者にはもうひとつ、小人が出てくる作品、「小さなおじさん」があるという。それも読んでみたくなる。