豊臣秀吉から、小田原征伐が終わる頃に言われた。家康殿には、関八州を進呈する、と。代わりに、父祖代々戦いにより勝ち得てきた領地、東海五か国は差し出せと。
家来の反対を押しきり、それを承知した家康。関東にはいまだ手付かずの未来があるという直感の故。
だから、根拠地を鎌倉の古都でも、百年
間関東を治めた北条氏の居城のある小田原でもなく、当時はひなびていた江戸を本拠地に選んだ。うまく経営すれば、豊臣氏の大阪にまさるものにできるという予感だった。
家康をはじめとして家臣にもろくな住まいもない状態から、家康が第一に取り組んだのは、江戸周辺の土地をいかに住みよくするかということだたった。当時は利根川が南流して江戸湾にそそいでいた。ために、江戸周辺は水浸しの低湿地。それを変えるためにはどうすればいいか。家康から江戸の地ならしを言いつかった伊奈氏。文官で、戦時中は同僚に無視され勝ちな存在だったが。家康はちゃんと見ていた。
伊奈は、利根川を、北の方で曲げて、江戸に来ないようにすることを主張した。容易くはできないが、伊奈氏は三代に渡り、河川の流路変更の工事に身をつくし、ついにそれを実現する。その恩賞として、以降八代、百四十年代官頭、のちの関東郡代の職を勤める。
第二章に登場するのは、京にある豊臣家の貨幣鋳造役の後藤家の職人が、江戸の家康のもとで貨幣鋳造を始めるまでを描く。のちに、後藤家の養子となり、後藤の名を名乗る金座頭取後藤庄三郎の事績を描く。
第三章に描かれるのは、江戸の上水確保の顛末。湿地帯だった江戸の地下水では飲料に滴さない。飲料に耐える真水を探し求めたのは、家康の菓子調製を司っていた大久保藤五郎。見つかったのが、赤坂の溜め池と、神田明神山岸の細流。二つの水を江戸の町まで流す上水路をつくった。
十数年後、江戸の町は広がり、人工も増えて、これでは不十分となる。武蔵野の台地から上水を引っ張って来ようという計画が進められる。担当するのは水源となる池のある村の名主、六次郎。彼は、大久保のこしらえた開渠の水路を地下に埋設して暗渠にする。それに協力したのが、土木実務者の侍春日。
これが後に神田上水と呼ばれる上水路。
第四話で語られるのは石垣作りの顛末。そして最後の第五話では、江戸城の天守閣建設にまつわる話が描かれる。
第四話と五話は、拾い読み程度しか読んでないから、読了とはしないが、今回はこれまでにする。
世に知られた人物が主人公でない分、話として面白いし、意外な江戸ができた頃の様子が描かれていて、興味深いのだが、じっくり読む気分になれないので、これでやめておく。
明日返却する。
木曜が期限の本2冊、山岡鉄舟の生涯を描いた山本兼一さんの本は、ひとまず明日返す。可能なら再度借り直そうかと思う。つまり延長するということ。幕末篇と明治篇の上下2冊。