京都市井図絵シリーズの1冊。
京都の庶民の暮らしを写した短編集。
タイトル作を含む6編からなる。

篠山からきょうとの遊郭につれてこられた娘お佳の数奇な成り行きを描いた最初の編。故郷で奉行屋敷で奉公していて、数奇道具の目利きもできたお佳は、京への道中で出会った僧侶がぜげんに伝えた言葉により、単なる遊女ではない道を歩むことができた。

第二編は、抜け荷に手をだし、財産没収された、もと大店の下働きだった彦太郎の、牢死した主の家族への献身的な奉仕と、いい名付けだった主の娘を捨てた男に傷を負わせて、島流しになった顛末を描く。古い帳簿をほどいたこよりで、織物を作っていた、もとの女主。帳簿に使われていた紙のなかに、貴重な文書を見つけるという、興味深い話が語られる。

第三編では扇問屋の大店の若旦那が女出入りのあげく頓死。買い集めていた骨董品を売り払い、若旦那が捨てた女たちに詫びをいれて回る番頭と手代。しかし、中には何万両にもなる、來迎図に火をつけるほどの恨みを持つ女もいた。

第四編、人のいい夫婦が行き倒れ寸前の老人を引き取る。正体不明の老人だが、品もあり、そのうち近所の子供に手習いを教えるだけの教養もあるとわかる。そんなある日、老人の正体がわかる。彼をさらおうとしたやくざものと指図をしたお店者を、老人と同じ長屋に住む浪人が助ける。老人は大店のもと主だったが、養子に入った親戚のものに店を追い出されたとわかる。手代見習いから先代の主に見込まれて婿養子となり、先代が持っていた、空海の自筆文書を譲られた。大層な宝である、それを狙っていた養子が老人から取り上げようとしての仕業だとわかる。奉行所の手が入り、養子と実父は捕まる。空海の文書を見た浪人は発心して、巡礼に旅立つ。

第五編、奉公に我慢できずにやくざの下っぱになった芳助。彼を慕い、故郷から出てきた、幼馴染みのお清。二人が立ち寄った骨董屋で見た陶器に魅せられて.手付けを置く芳助。そんな彼が兄貴分のみがわりになり、京を逃げ出し岐阜に。料理茶屋で働くお清は、芳助のためにと、少ない給金をためて、毎月手付金を足していた。最初に来たときの芳助の魅せられぶりを見ていた手代は、必ず買い取りに来ると確信し、蔵の奥にしまいこみ、他には売らないことにする。
四年後、ヒ素かに内偵していた奉行所は、真の下手人である兄貴分と親分を捕まえ、拷問により真実を突き止める。監視されていた岐阜の町でそば職人として堅気になっていた芳助も捕まり、京へ護送されたが、無実であることが判明し、解き放たれる、奉行の門で待っていたのはお清だった。二人はその足で、陶器を買い取りに向かうのだろう。

最後のタイトル作。京都北部の浄土寺村には二つの出役が課されていた。背後の如意ヶ岳での送り火の準備作業と、銀閣寺の庭池にたまった白砂をさらいあげる作業。浄土寺村で成長した幼馴染みの彦次郎、佐七、お紀勢の三角関係は、彦次郎の失踪で片がつく。佐七に嫁ぎ、修平を得た。しかし、なぜか修平を幼い頃から嫌っていた。その修平が失踪し騒ぎになるが、しばらく後に見つかる。家に帰るのが揖屋な修平が通りかかった庭師の親方についていっただけだった。
しかし、その騒ぎがきっかけで、修平は天井に隠されていた青玉の笛を見つけ、それをめぐる夫婦の言い争いにより、佐七の旧悪が露見する。貧乏な暮らしのために。近所の遺跡を発掘していた彦次郎。それを知った佐七は彦次郎に手渡された笛をとり、これを三角関係の解消にと、彦次郎を殴り殺し、生き埋めにした。それを聞いて、お紀勢も告白。修平の父は彦次郎だと。佐七を刺し殺し、家に火をつけたお紀勢。
銀閣寺の庭にさらいあげた白砂で作られて、有名になった二つの景観。それの発案者が、彦次郎の先祖だとわかったのは、事件が終わったあとだった。