どうにか最後まで読み終えた。それなりに面白くはあったが、いくぶん軽い印象を受けた。ライトノベルとかファンタジーのような軽さを。
幕末の幕府において、江戸城を無血開城に導く働きをした旗本の英傑として、三舟と呼ばれた3人の侍がいた。勝海舟、山岡鉄舟、高橋泥舟。彼ら3人の若き日の冒険を描いた作品と言えばいいか。
とはいえ、明治21年死期の迫った鉄舟を見舞いに訪れた海舟に、鉄舟が昔話を語るという体裁の導入から、主人公は鉄舟という方がいいか。ラストの書き方からいうと、引き続き海舟を主人公にした物語が続編として語られるのかも知れない。

鉄舟の生家は、江戸時代初期の一刀流の剣豪神子上典膳の子孫である小野家の庶流。彼の父は小野派一刀流の武術で知られた存在であると共に、優秀な旗本でもあった。79才で没するときには、高山郡代を勤めていた。彼の三人目の妻女によ生まれた六人の息子の長子が、当時17才の鉄太郎だった。母は塚原卜伝の子孫である鹿島神宮神官の娘。二人の剣豪の子孫であった鉄太郎。
小野家の家督は先妻の兄が引き継ぐことになっており、鉄太郎兄弟は冷飯食いになった。父の死で、郡代屋敷を退散した鉄太郎らは、父が息子たちの養子に持参させようと、一人500両の大金を残していた。弟5人分の3千両の金を隠し持ち、江戸に向けた旅に出た。東海道に出ようと下呂まで来たときに山賊に教われた。隠し持つ大金のことを知る者が首領で、かなりの武術を持つ。天下が動こうとしている今、それを動かす風になりた、その軍資金にほしいという。一人ではない鉄太郎はあわやというときに助けが現れる。槍を担いだ若者は、幼馴染みの山岡紀一郎だった。後に静山と名乗り、天下無双の槍と言われた男。そして、その弟が泥舟であり、妹が鉄太郎の妻女となる。
鉄太郎の最初の剣術の師匠が彼の稽古相手として連れてきたのが、謙三郎のちの泥舟だった。剣術の家と槍術の家として付き合いがあった小野家と山岡家。
父の高山郡代就任で江戸を去り、別れていた。
尾張に行くという紀一郎と行を共にした鉄太郎だが、尾張に着く直前に紀一郎が倒れてしまう。なんと空腹のためだった。槍術に優れても金がない貧乏暮らし。同じ宿に同じように空腹で倒れた男がいると聞き、好奇心で見に行く。それが、鉄太郎と勝麟太郎、のちの海舟との出会いだった。高価な蘭学書を買うために金を使い果たしたための、行き倒れだった。麟太郎もかつて剣術の師により、連れてこられ、幼い彼をたたきのめした腕を持つ男だった。

江戸に戻ったものの、家督をついだ兄には屋敷しか残されず、弟たちが持参金にする大金が残されたことに、気分を害してか、冷遇される鉄太郎たち。ともかく、弟たちの養子縁組に奔走する鉄太郎。

遊びにも世慣れた麟太郎につれられて、吉原に足を踏み入れた鉄太郎は遊女葛城に溺れる。通いつめて、知らぬ間に作った大金の借財の取り立てに困る鉄太郎に金を稼ぐ仕事をやろうといってきた男、清河八郎と知り合う。武術も学問も秀でていながら、軽薄な物言いで天下を論ずる清河にうさんくささを感じる鉄太郎。
それが彼にひとつの騒動に巻き込むきっかけとなる。
当時、冷飯食いの旗本の子らが失踪を繰り返していて、黒刀組と呼ばれる一団が悪さを仕掛けていた。やがて、その一味に謙三郎が加わっていると知った鉄太郎は、彼らを追うことになる。
そして、紀一郎に槍術で御前試合を求めてきた九州の槍術家南里紀介。
黒刀組を操る忍び一族の女が吉原にいた葛城。彼女の薬と色で操られる黒刀組と、謙三郎。
操られる振りをして彼らを探っていた謙三郎。
最後の決着は、紀一郎と南里の御前試合で決することになる。
結果は引き分けに終わる。邪心を捨て槍術のみにて立ち会った二人に勝負はつかなかった。
葛城は姿を消し、操られていた黒刀組は正気に戻り、紀一郎の弟子となる。
幕末の江戸で人知れず活躍をした三舟。彼らの活躍が今度は海舟の口から語られるらしい。