徳川幕府が終わるとき、京から進軍してきた朝廷軍が江戸城攻撃をやめて、幕府から城を承けとる二日前の大奥が舞台。
皇女和宮の静寛院宮は、すでに出て、田妥邸に移り、今や薩摩篤姫の天璋院が、残ったものをすべて大広間に集め、最後の言葉をかけている。その後、天璋院は一橋邸に向かう。
奥女中たちは、高位のものは、天璋院と共に去り、以下順に立ち退いていく。
この話の主人公、呉服之間のりつは、お目見えであるため、第二陣に出ていくはずだったが、妙なことが気になった。針の始末をちゃんとしたかどうか。気になって、呉服之間に引き返したりつ。
貧乏旗本の娘だったりつは、遊び人の兄の代わりに一家を支えようと、薩摩藩上屋敷の奥女中だった伯母の推挙で、大奥の、薩摩出身の御台所だった天璋院付きの女中に上がる。最初は雑用係の三之間勤めだったが、針運びが認められ、呉服之間勤めに役替え。お目見え以上の役職だが、それがどん詰まりで、出世には縁がない部署だった。それを聞いて、伯母は落胆したが、りつは満足してた。人の顔色を見たり争ったりが嫌いなりつには、針仕事だけに専念できる呉服之間はに不服はなかった。しかし、大奥を出て、どう生きていくか、不安しかないりつ。
針の始末を確認して、一人官軍が来る前に城を出ようとしたりつは、自分だけしか残ってないと思っていたのに、別の女中に出会う。天璋院の飼い猫サト姫の世話をしたことがある御膳所の仲居のお蛸。彼女らは魚などの呼び名をつけられる。逃げ出した猫を連れていくために、探しているという。早く城から逃げようとの説得にも応じないお蛸に協力して、一緒に猫探しを手伝うりつ。
彼女はさらに、御三之間のちか、御中臈のふきと呉服之間のもみぢに出会う。もみぢは静寛院宮付きの女中。
捕まえた猫を入れておくかごを探したり、りつともみぢが針仕事の優劣を決める勝負を始めたりして、夜までに城から出られなくなった五人の女中。
彼らには城を出ても帰る場所がなかった。生家が没落したり、死に絶えたり、あるいは一族のものに代替わりしたり。なんのかのと居残った五人だが、お中臈のふきは、最初からそのつもりで、居残ったものを無事に城外に手引きするために、残っていたようす。
翌日、官軍が来て、部屋を荒らして略奪する様子を、隠し部屋にて見た五人は、ふきの手引きにより、秘密の通路により、無事に城の外へ。
それから何年たったか、最後に登場する五人は明治時代をいきる女たちだ。ふきは逃走の手引きをした医師と所帯をもち、自身も女医者になっている。
りつともみぢは、二人で仕立屋をしていた。お蛸は、天璋院の亡くなるまで台所方を勤め、還暦を過ぎた今、年下の料理人と所帯を持った。
ふきも居残ったものを助けるために残ったのかと、りつが問うと、天璋院様の命だという。徳川の宝を守れ、と。女中たちも宝だし、城も、江戸の平安も徳川の宝だと。それを守り、その最後を見届けることを、ふきは望んで居残った。
そうしなければ、剣をつかんで官軍に立ち向かったかもしれない。その剣をメスに変えて医師となったふき。