前半を読みながら、ああこれ読んだことあると思った。でも後半は思い出せない。しかし、思い出せる部分も、再読しても新たに引き込まれてしまう。

主人公は山神桃子、四十代ばついちの独り者。勤めていた会社が倒産して、先行きに不安を感じていた桃子さん。そんなときに、小学6年までいた故郷の四方山市から手紙が来た。亡き父親の姉である伯母さんが入院したが、世話をする家族がいない。唯一の血縁である桃子にたのみたいと市役所からの手紙。覚えがない伯母なので放置しておいたら、一度見舞いでもしてくれないかと。薄情と思われるのが嫌で、出掛けてみる。ぐずついていたので、3時間近くかかる田舎の町に着いたのは夕方近く。
面会した伯母は意外に元気で、口悪く桃子をけなす。父に似て不器用そうだと
。父は商売に失敗して、故郷の町を出た。桃子も結婚に失敗し、仕事にもあぶれている。ずばり言われて反駁もできない。そんな伯母さんが帰って来いという。退院できるかどうかわからないから、伯母の家で暮らせばいいと。今夜も遅いからと一晩だけ泊まる気で伯母の家にいってみると。そこは父が手放した昔の家だった。昔ながらの杏の木を見ながら、帰ることにした桃子。
履歴書を伯母に預けたら、町の旧市街にある図書館の別館に司書として雇われた。はじめは見習いだが。
本館で研修を受けた桃子は司書が居つかないのは館長のせいだという噂を聞いた。会った館長は無愛想だが、小柄な老人。子供の頃に桃子が通ったままのたたずまいを懐かしみながら、働き始めた桃子。
昼休み前に、2階に本を片付けにいった桃子は、続きが知りたいと頼む声を聞く。司書として対応しようと、本棚の向こう側に回った桃子はあっけにとられる。そこにいたのははだかの男性。外人みたいなおじさんは、本を探すのではなく、青田早苗ちゃんを探してもらいたいと言う。自分は絵本から抜け出したはだかの王様で、昔、自分がいる絵本を読んでくれた早苗ちゃんが今どうしているかを知りたいと。
絵本から抜け出したという非現実左に驚きながらも、いつのまにか王様の頼みをきくために奮闘する桃子。
引き続き、絵本から抜け出したという、オオカミ、座敷わらし、幽霊らの探索に付き合っていく桃子。目的が叶えば絵本に戻るといっていた彼らは、なぜか桃子の住む伯母さんの家に居着き、まるで家族のように桃子と暮らし始める。友達もなく、自分に自信もない桃子は、おしゃべりも苦手な子だったが、絵本から抜け出したという連中と暮らし、言いたいことをぶつけ合うようになって変わる。

それぞれの話の始めには、桃子が自分の近況を報告する手紙が書き進められる過程が書かれるが、それが最後にある出来事に結び付く。うまい設定だな。

知りたいことが叶った連中が絵本の中に帰らなかったのは、なんと桃子の行く末が心配で、知りたくて、この世に残ったのだとわかる。
そして、桃子の帰郷と共に、奇跡的に意識が戻った伯母は、実は桃子のことを気にかけていた絵本の中の魔女が乗り移っていたのだと、最後にわかる。
構成のうまさも光る傑作だな。
久しぶりに読んで、柏葉さんの作品はいいなと思う。