みさと町立図書館分館は、本館や町役場のある町の中心部から五分もかからないのに、田畑がひろがる田舎。ポツリポツリとある老人ホームや農家レストランと共にあるこぶりな図書館。
三十才とあとで知った役場職員の岡部さん、児童室担当の三十路の司書、香山さんと、主人公である契約職員で、一般室担当の山本遥の三人きりの図書館。

遥は3年前に母親を脳卒中でなくし、定年した父と二人暮らし。母の死後は、ボーッと何もしないでいる父を心配していたが、料理を作るようになって、父は変わった。料理本を見ながら、レシピ通りに作る父は、変わった食材は使わないから、できるか図も少ないが、飽きずにやっている。いくつもの料理本を読み比べて、同じ料理を何度も作る探究心がある。

靴を脱いで上履きで利用するために、靴がなくなったとか客に文句を言われることもあれば、未返却の本があると新たな貸し出しができないと断ると、食って掛かる母親もいる。娘に携帯で確認すると、ちゃんと返したという。思いついいて聞いてみると、学校の図書館へ返したという。しかも勝手に書棚へつっこんだという。確認をとり、改めて入棺してもらう。

役場から派遣されただけで、図書館業務を知らない岡部は少し異常。甘いものが好きで、食事代わりに甘いものばかりを食べている。隣町に実家があるのに、アパートで独り暮らし。

そんな彼を見る香山の視線が熱いと感じた遥。でも誤解だった。アラフォーながら結婚しない香山に心配する香山の祖母。病で先がないとわかったために、つい付き合っている男性がいると嘘をついてしまう。結婚式のことまで先走る祖母のためにと、嘘の結婚式の写真を撮ろうと考えた香山は、相手役に身近な岡部を狙っていただけだった。

結局、その写真を見ることもなく死んだ祖母。嘘ついて騙したことに後悔する香山だが。遥はうそでも祖母が幸せな気持ちで死んでいけたのはよかったと言う。

近所の屋敷に一人暮らす老婆は、けちに徹していて、遥は苦手だった。そんな老婆のもとに、父が近くの山で取ってきた山菜を取ってきたので、お裾分けに訪ねて異常に気づく。脳梗塞で倒れた老婆は入院し、命は助かるも、言語が満足にできず、近所に別居する息子夫婦に、施設へ入れられてしまう。父が作った惣菜を病院に届けた遥は、苦手な老婆と少し心を通わせる。やがて老婆の死後に、その息子からありがとうと言う言葉を伝えられた遥。

時には図書館に泊まり込む岡部の高熱に気づいた遥は、アパートまで香山の車で送ろうとして、父に連絡すると、家につれてこいと言う。一人暮らしでは仕方ないと。父の手料理に舌づつみをうち、泊まりこんだ岡部に少し心が動く遥。
なぜ実家に帰りたがらないのか知りたくて、無理矢理に彼を実家に帰らせるも、頼まれて一緒に行くことになる。
二十年近く帰ってない実家は、屋敷に建て替えられていて、番地なしでは彼にも探し当てられなかった。
出迎えた若い義母。父は病院経営の医師、義母は看護士だった。義母になった頃から、甘いものを一切禁じられた岡部。それに反発するかのように、甘いものしか口にしない。そのために、実家は落ち着けない場所だった。気を休める場所ではなかったらしい。
そんな事情を知った上で、見直してみると、案外いい男にも思えてきた遥。

母の死を知った上で、遥の家に出入りしてきた、夫をなくしアパート暮らしの父の同窓生。まるで主婦気取りの彼女に、反発しながらも何も言えずにいた遥だが。母が死の間際に握りしめていた栗の実を、その女性がゴミとして捨てようとするのを知った遥は、ついに爆発。生まれて始めて、喧嘩した。気持ちをぶつけて、女を追い出す。

三十路独身女性の生活と思いを描いた作品。司書が主人公で、図書の話かと思い借りた本だが、勘違いだった。途中で何度か中断しかけたが、最後まで読んでみたら、案外にいい。
私の娘も同じ年頃ということもあり、父と娘の関係は興味深い。