其角と一蝶、とサブタイトルがつく作品の第一作。前に読んだ「酔いもせず」の前日譚。
二つの序から始まる物語。最初の序では、琉球から江戸の将軍のもとに、江戸上りしてきた琉球一行の楽士の男の独白。故郷で待つ恋人に語りかける。三線を相棒にしている。
二つ目の序では、暁雲なる男が、吉原から逃げ出し、入水自殺した女の顛末を見届ける様が描かれる。
吉原で、紅花太夫から、自分に合う男が深川にいると聞いた、たいこもちの暁雲。深川に移ってきた風変わりな俳諧一門がいて、そこにいる面白い男が彼とうまが合いそうだと言う。
興味に引かれて、深川に足を伸ばした暁雲、こと絵師の多賀朝湖。
芭蕉の庵で、奇妙な女を目にする。琉球衣装を身に付けた女に驚いた。
彼の名を知っていた芭蕉は、弟子になりたいという彼を、芭蕉の後援者で、弟子でもある杉風の反対をごまかすために、客分として出入りすることを許す。
一門で、誰よりも才能に溢れ、楽々と句を詠むのに、言葉遣いがまずくて、問題になる男、其角。話してみて、一緒にいて気疲れがない上、からかい甲斐がある其角が気に入った暁雲。次第に親交を深め、友達となる。
庵で起こった奇妙な事件、琉球の歌や三線に張られた蛇皮にちなんだか、蛇を読み込んだ歌がかかれたものが残されている。
近所の軽業小屋に出ている琉球出身の女うと。彼女は江戸上りに出た恋人の失踪のことを調べるために江戸まで来たらしい。
やがて、杉風の料理人が住まいで殺され、うとに疑いがかかる。
暁雲と其角は、彼女の無実を証し、真犯人を見つけるために動き出す。
暁雲が昔の弟子だった娘が、将軍の生母に見いだされ、無理して大奥に入ろうとしたものの、生母の占いによる取り消しで、借金を抱え、吉原に。彼女を慰めるためにたいこもちになった暁雲。両親の死で生きる意味を失い、自害した女を、今に引きずる暁雲。
盗賊一味の人身売買を阻止しようとして殺された琉球楽士の若者。見殺しにされた彼を探すために単身で琉球から旅してきたうと。彼女の思いが満たされたとき、芭蕉は旅心をそそられる。新たな生き方、俳諧に足を向ける芭蕉。