新酔いどれ小藤次シリーズ第十巻。
長年のつきあいの紙問屋の主、久慈屋昌右衛門の供として、伊勢詣りを終えた一行3人が江戸についたところから始まる。最後は、伊勢詣りの途中で知り合い、一緒に船参宮をした、江戸の長屋住まいの子供たちが無事に江戸に帰り着き、互いに再会を喜び、長屋では飼えない、旅の道連れになった白い犬が、小藤次の住まいである望外川荘で飼われることになるまで。これで、伊勢詣りのすべてが終わった。

留守にしている間に、小藤次を待っていたものが二組。一つは旧主豊後森藩主久留島通嘉の呼び出しと、もう一つは北町奉行年番与力からの面会の要請。普段つきあいのあるのは南町奉行所だから、見当もつかないが、今回の作の目玉となるのが、こちら。

貧乏な小藩である森藩は参勤交代の費用に困って、藩内の商家から金を借りた。その店のわがまま娘に頼まれて、参勤交代のの行列にまぜて、江戸見物につれてきた気が弱い殿様。贅沢になれた娘の扱いに困り、小藤次に助けを求めてきた。江戸住まいの本妻にも知られ、困惑する殿様のために、小藤次は、久慈屋の紹介で、町中の長崎屋に泊め、金は持っているようなので、芝居や料理屋、江戸見物を漫喫させることにする。遊びに詳しい家来を案内につけたものの、最後には家来と駆け落ちしてしまう。厄介払いしたことになる。

北町奉行年番与力に会い、何か頼まれ事をされた小藤次は、その夜、嵐の中へ無理に船をだし、転覆し、行方不明となる。愛用の刀や身に付けていたものが見つかり、死んだものと思われて瓦版にもなり、日頃磨ぎ仕事をしていた久慈屋の店先は墓のように花で埋もれた。

ある夜、久慈屋に奉行所の同心と与力を名乗るものが訪れ、入り口が開きかかったところへ声をかけたのは、小藤次の息、駿太郎。偽物だという駿太郎に襲いかけたくせ者の前に現れたのは、死んだはずの小藤次。剣術では名を知られたもと与力と同心だったが、小藤次の前では歯が立たず、一気に倒され、事件落着。
長年の慣行から、北町奉行所向かいの商家に金をせびったために、奉行所を追放された二人が、商家を皆殺しにし、さらに久慈屋をも狙っていると聞いた小藤次が仕掛けた罠だった。
家族にも話をせず、行方をくらました小藤次の深謀には驚くが、しかし一抹の残念な気持ちも覚える。もっと家族を仲間を信じろと。

また次の冒険まで、小藤次とはしばらくお別れか。