読み始めたら、引き込まれてしまい、一気に上下2冊を読んでしまう。
安土桃山時代に活躍した二人の絵師、狩野永徳と長谷川等伯と、彼らの一門の確執を描いた作品。
北陸では多少知られた仏画師の久六が、養父母の死の後に、一流の絵師になろうと、故郷の能登七尾を出て、京へ向かう場面から始まる。途中で行きあったのが、狩野家の絵師で永徳の異母弟。のちに、一門の安泰のために、目障りな久六改め等伯の命を狙い、最後には永徳の急死で一門が危機を迎えたとき、将来が有望な等伯の跡継ぎを闇討ちにすることで、回避させた影の男だった。
織田信長が天下統一の渦中に上洛した久六一家。古郷の寺の本山に世話になり、住持の縁で、利休と前の内大臣九条の後ろ楯を得て、次第に仕事を得るようになる。とはいえ、代々将軍家に仕えてきた狩野派との隔たりは大きい。信長が安土に築く城の絵を一手に引き受けた狩野派に苦渋する久六。わずかながら後ろ楯の世話で得た仕事をきっちり勤めていくことで、次第に認められていく久六、改め等伯。彼の台頭に危機を感じた永徳の異母弟は、昔遊んでいた頃に知り合った忍び崩れの男を雇い、安土を訪れた等伯を殺そうとするが失敗。
永徳の長子の成長のなさに、それに比べて等伯の長子の絵の才能を、将来の危機と考えた。
永徳が健在の間は、信長に続き、秀吉にも気に入られた永徳のもとには、次々と大きな仕事が舞い込み、等伯がいくら優れた絵を描こうと、あまり影響を感じていなかったが。
長年の大作の仕事続きで疲労が溜まり、死病に気づかなかった永徳は、気づいたときには遅すぎて、五十を前に早すぎた死去。跡継ぎの才能のなさと素行が悪いことから、将来があやぶまれ、弟子の一部は狩野家を出て、等伯のもとに。
等伯の跡継ぎの絵の才能に危機感を抱いた永徳の異母弟は、一門のためにと、あえて闇の世界に足を踏み込み、等伯跡継ぎの暗殺を決意する。
人の心の奥底には闇の部分が眠っている。生涯意識せず暮らすものもあれば、あえてそこに踏み込むものもいる。
永徳も等伯もそんな暗部を覗いたこともあるが、あえて踏み込むことはできなかった。
永徳と等伯、どちらにも荷担することなく、淡々と両者を描いていて、なかなか読み概がある作品だった。