三部構成になっている。一部と三部は明治時代の話。
日露戦争が始まる前に、染織の図案家の神坂は、品川弥二郎に連れられていった大阪の園遊会で、若冲の末裔を見かけた。家は没落し、跡取りの兄は失踪。残された妹は舞子になっていた。彼女の希望で神坂は、彼女の祖母に会うことに。八代目の桝屋に嫁いできた祖母は、夫の祖母で、若冲の妹に当たる美以さんと話したこともあるという。
そして語られた若冲の話が二部という構成になっている。
美以が若冲の店に来たのは師走だった。大阪の薬種問屋の吉野家五運に連れられて来た。彼女は京を追放された竹内式部の娘だった。若冲が飼う鳥たちの面倒を見ることになった美以。絵に詳しいことから、やがて若冲の助手に。
若冲には二人の弟があり、店のことは弟たちが取りはかって、若冲は名ばかりの主で、絵にかかりきり。
ある日、大阪にいく若冲が美以をつれていく。島流しにされる式部に一目会わせようとしてくれた。結局、それは叶わなかったが、若冲はのこされた美以をあわれんで、引き取ってくれたのだと知る。
若冲はいきなり隠居して、弟に家督をゆずり、末の弟と美以を夫婦にすると言い出す。末の弟は実は若冲の息子だった、
絵の修行に長崎に行っていた頃に、中国人の妾と情を交わしできた子。当時の知人が数年後に連れてきて、はじめて知った若冲。弟夫婦には子がなく、独身の若冲は、弟として引き取った我が子を養子にして、いずれはあとを継がせるつもりだった。
昼間は店の仕事をする末弟は、夜は色町で遊ぶのが楽しみだった。だから、夫婦にはなるが、男女の契りを結ばないと、初夜に言われた美以。
夫の相手が美以が売られた店の遊女だと気づいた美以は、夫に手込めのように一度きりの交わりを持ち、懐妊。
夫は、若冲が留守の際に起こった錦小路存亡の危機の解決のために出掛けて、死人として帰ってきた。
若冲の奔走で、西小路の問題は解決するも、以後若冲は絵筆がとれない。
そして、京を襲った大火事で、絵では後世に残すことができないと思った若冲は、石仏作りを始める。さらに水墨画を描き始める。
身近な女性から見た若冲の姿を描いていて、結構よかった。事実だったかどうかはわからないが、今まで読んだ中では一番好感が持てる若冲像かな。