前に読んだ作品の前半部。かなり期待していたが、案外つまらない印象。
町衆と京の朝廷に対する江戸幕府の攻撃が始まるまでの過程を描いている。
関ヶ原の戦いで勝利をおさめた徳川家康。その時から徳川幕府と京の朝廷との長い闘争が始まる。明治維新に至るまでの長い闘争が。

町衆とは天皇が住まいする京において、経済的にだけでなく、趣味と教養に裏打ちされた都人という階級をさす言葉。その誕生は戦国の混乱期にあった。戦場にもなった京都で自衛のために立ち上がった人々の集団。一時は京を支配したこともある。そんな反権力志向の町衆を恐れ、徹底的に弾圧した織田信長。秀吉の時代には、海外貿易で資力を得た町衆は復活し、そのあとに権力を握った家康に危険視された。信長のように弾圧はせず、真綿で首を絞めるような陰険な方法で町衆を封じ込めていく江戸幕府。将軍になるや発布した京を支配するための悪法。天皇から庶民に至るまでの京を統制する法。
そんな町衆の代表格たる本阿弥光悦が京郊外の鷹ヶ峰につくった光悦村は、町衆の城と言える。
家康のもくろみは光悦を洛中からだすことにあったが、それを逆手に完全な自治権を持つ城にした光悦。
以後、城を破壊しようと幕府の尖兵となる江戸柳生家。尊皇思想の厚い尾張家の柳生家が防戦する、その闘争がこの作の眼目と言える。
二度目の戦いの主人公は尾張柳生の連也と江戸柳生の十兵衛。
だから二人の風貌がまず描かれる。連也がまず京に向かい、光悦村に滞在、そこに現れた荒木又右衛門。十兵衛はこの上巻の最後に京に入る。だから話の中心は、彼らの人物像に関する著者の歴史的考察、さらに幕府と朝廷の暗部にかくされていた闘争の様相が長々と説明される。そのあたりがつまらなく思えた。
とはいえ、そんななかにも、信長により自刃させられた家康の長子の母親である今川家の女の血縁者が綿々と大名として続いたという指摘は興味深い。

町衆の城を襲う幕府の最初の攻撃では、江戸柳生の宗矩とおわり柳生の兵庫助が対峙した。それを描いた作もあるのかどうか。
一所に借りた「まほろばの城」がそれではないかと思っていたが、どうやらそれ以前の、光悦村ができるまでの過程を描いた作品のようだ。
ともかく、次はこれを読むが、分厚さに圧倒される。500頁もの作、一日で読めるかな。