深川の質屋が差配する裏長屋千七長屋は世間では善人長屋として知られていた。住人の誰もが親切で、困った人がいると世話をしてしまう。しかし、長屋の住人は裏家業をもつ小悪党だった。庇護する親分や仲間を持たない彼らの面倒を見てくれているのが、差配の儀右衛門。その娘のお縫の目を通して、長屋の連中の活躍を描いた作品シリーズ。今回は書き下ろしの長編。

長屋で唯一裏家業をもたない加助。彼の行方不明だった妻子のことは前作の最後に明らかになった。錠前師の加助に近づいた盗賊の情婦だったのが、彼の恋女房。心を入れ替えた彼女を悪辣な盗賊からひきはなすために、盗賊の鏡と言われた大盗月天の丁兵衛の助けで、いのちはとらず、江戸から追放した夜叉坊主の代之吉。今回は悪辣にもそいつが江戸に舞い戻り騒ぎを起こす。

稼ぎ頭の妻に死なれて、6人の子供の生活費に困った角兵衛。こそ泥を働いたのを見とがめた長屋の庄治。その角兵衛から聞いた怪しい浪人と町人の密議。折しも的屋のまとめ役の親分が暗殺されていたが、その話に符合する。
さらに盗賊の大親分、月天の丁兵衛も襲われ行方不明。次々と起こる悪人の成敗。下手人は閻魔の世直しと称する瓦版まで出して、世間では評価が別れる。
しばらくして、今度はまっとうな商家がいくつも襲われ、家族皆殺しに。
何とか正体を掴もうと調べ始めた長屋の連中。さらに加助が見合いした女が嫁ぎ先の商家で同じ目に遭ったのを知った長屋の差配の儀右衛門は、本腰をいれる。

新しく奉行所の同心の養子になって跡をついだ男の挙動不審。閻魔組はどうやら3人の侍で、彼らに襲う場所を教えているのが、盗賊らしい。そして、それが江戸を追放された夜叉坊主だと知れたとき、儀右衛門は、折しも一命をとりとめ、復讐に逸る月天の頭と会う。
さらにえんまの仲間だと思っていたしんいりの同心は、養子先の死んだと言われていた実の子が、閻魔組だと気付き、一人で始末をつけようと割り込んでくる。
その同心により、盗賊夜叉坊主の一味は惨殺される。
同心だった養父と実子は自害し、養子は同心株を売り、国許へ帰る。長屋に不審を抱いていた同心に、不安を感じていたお縫だが、一方で淡い恋心もあったようだが。