高瀬川女船歌シリーズ第3作。
6編が収録されている。
最初の編で、前作で島流しになったお蕗が特赦により、京に戻ってくる。宗因をはじめとした人びとに暖かく迎えられ、悪い思いが残る嫁ぎ先に戻らず、角倉会所で働くことになる。
そんなお蕗が一人で外出をするのに不審をいだいた頭取があとをつけさせると、身なりの汚い坊主と会っている。話を聞いた宗因にはその僧に見覚えがあり、会って聞いてみると。お蕗は騙され、身の危険を避けるために殺したやくざものの供養を頼んでいた。その場でお蕗は島で習い覚えた笛を吹いたという。短夜の笛。
お蕗に供養を頼まれた僧は普照といい、久多の山村にある寺の僧で、村の川に橋をかける費用を得るために京で勧進をしていた。そんな普照に、宗因は彼が昔暮らしていた庚申堂に住めるよう取りはからう。
宗因の居酒屋尾張屋の近所の主の屈託に気づいた宗因は悩みを聞き出し、相談に乗り、解決に一肌ぬぐ。やぶからし。
尾張屋の客となった下駄の歯のすげ替え屋の老人の悩みに一働きして、誰もが不幸にならない始末をつける宗因。密かの藪。
道端の溝に落ち込んだ大八車を引き揚げる世話をしたことで、盗賊と間違えられた人々。なかに普照がいたことで、駆けつけた宗因。捕まっていた少年が将来を悲観して自害。駆けつけた姉により、普照の父と一緒に藩を追われた武士の子とわかる。扇塚。
普照が木賃宿にいた頃相談に乗ってやった男が、京に舞い戻り騒ぎを起こし、自害を企てる。それを思いとどませるために説得する普照と宗因。役人と商人の結託で、公事に敗訴した男の事情を知った別の役人や集まった京の人々の声援で心を入れ替える男。八坂の剣。
山奥の村に橋をかけるために勧進をしていた普照が言い争いをしていた男たちを慰めるつもりが、集めた大金を盗まれる。事情を知った宗因と角倉会所は、寄付を拒む普照に内緒に現地へ赴き、橋をかけることにする。
出来上がった橋は小さいが頑丈。しかし、いつ壊れるかわからない。貧乏村に修理はできないと、普照の師である住職は、橋を利用するものから、僅かでも銭などを受けることにする。銭とり橋。
まっとうに生きていても不幸は訪れる。人を陥れる悪者も絶えない。しかし、不幸な人を救うのも人。善意の繋がりに助けられて人は生きる。