朝井さんが小説現代長編新人賞奨励賞を得たデビュー作に続いて出した2作目。江戸の庭師のもとで働く、元浮浪児のちゃらが主人公。
幼い頃に親にはぐれ、一人で生きてきた浮浪児。何度も里子にされたが、どこも長続きせず、ひとり食べ物を盗んでくらしていた。逃げて、神社の楠の天辺まで昇り、食らいついていた彼に声をかけたのが、千駄木で庭師を営む植辰の親方辰蔵。
庭師の仕事は空仕事と呼ばれる。空に近い場所で働くから。お前もそんな仕事をしてみないか。盗みを非難もせず、変な同情もしないで、当たり前の相手のようにはなしかけてきた。そんな親方の言葉に惹かれ、弟子入りしたちゃら。実名も知らぬ彼を、親方は、家につれていき、これからは俺を親だと思えというと、ちゃんちゃら可笑しいと浮浪児が言った。そこから名付けられた、ちゃら。はじめは打ち解けなかったちゃらも、庭師として10年。いまやいっぱしの庭師。親方に作庭を任されることも。
同い年くらいの辰蔵の娘、お百合。京都で庭師の修業をしてきた辰蔵は、幼いお百合をつれて、帰ってきた。恋女房だったか、後添いをとらず、父と娘二人暮らしに飛び込んだちゃら。作庭は一流だが、普段は酒好きで間が抜けた印象の父に変わり、きびきびと家事をこなすお百合。
弟子ではないが、京で知り合った庭師二人が、居候のように共に暮らす。ひげ面で偉丈夫だが物静かで、石が好きな玄林。頭が大きく小男の福助は、
水のことが得意。
互いに遠慮もない口を利き会う四人の暮らしに、とんでもない厄介ごとが襲う。その顛末が描かれた本作。

京の文人が今は廃れた京の庭師の流派嵯峨流を復興し、江戸に来ていた。家元を名のる白楊は高等な作庭術を論じて、風雅だと評判に。
そんな白楊がなぜか辰蔵に含むことがあるのか、ちゃらを引き抜こうとしたり、辰蔵の得意先の庭をだいなしにしてくる。木殺しという木の水の通り道だけを切ることで、木本体はどうもないが、枯れていく。
おかげで辰蔵は庭師の仕事の手入れの不備をけなされたり、植木の植え代えや賠償に、借金をするまでに。
白楊に辰蔵は覚えがあるが、辰蔵には記憶にない。

それに立ち向かうちゃらたち。ちゃらと辰蔵のもとで修業したことがある船宿の末っ子で、今は一人前の船頭の五郎太、偶然知り合ったにわか武士の伊織。
阿片を使い、武家や商家の主を骨抜きにして利欲を重ねる白楊。最後には町奉行の手入れがあるが、白楊に寝返った玄林と、ひとり立ち向かったちゃらは、川に落ち、なくなったと思われいたが、数ヵ月後、ちゃらはひょうぜんと帰ってくる。そこで幕切れとなる。

予想以上によかたった。やはり、お気に入りになりそうな作家だな。なぜか時代小説の女性作家にはまっている。