花鳥茶屋せせらぎは上野不忍池に面した六百坪の敷地に、珍しい鳥や植物を集めて、誰もが行楽できる場所。誰もが安心して行楽できるため、女子供にも人気がある。
敷地内にある鳥籠作りの親方富十のもとで修業中の勝次は16歳。
彼と幼馴染みで、花鳥茶屋の主、善兵衛の姪である、ひなたは、茶屋の茶汲みとして勤めている。
ひなたの父親は眼鏡職人で、2歳歳上の兄の耕太が見習いをしている。
喘息持ちの父はひどい発作をおこしたこともあり、伯父さんは何かと気にかけてくれる。
彼らはみな修業に入る前は、手習い師匠、立花玄斉のもとで机を並べた仲間。
玄斉は長崎でオランダのことも学び、様々な知識をもっていた。特に好きな鳥に関しては異国の珍しい鳥のことを熱心に話して聞かせた。今は塾をやめ、鳥の医者として生業としている。だから花鳥茶屋にもよく訪れる。
玄斉の話で鳥に魅せられ、高いとことが苦手な勝次は屋根吹き職人の父の跡を継がず、鳥籠職人になった。
耕太と同い年で、老舗の小間物屋、升田屋の若旦那、清一郎も手習い塾の仲間。
耕太が思いを寄せているおゆりは、植木屋の娘。琴を長らく習っていたが、名取目前に気持ちが絵に向かう。素人はだしの美人画がうまかったが、名古屋から来ていた本草学の写実的な絵に魅せられ、そんな絵を習いたいと、単身名古屋に向かう。
これらの若者たちの青春を描いた作品と言えるか。それぞれの苦悩や努力を得て、一人前の職人として巣だとうとする様子を描いている。
彼らを見守る者として、両親や親方の他に、昔の手習い師匠、戯作者の曲亭馬琴、前松前藩主がいる。
客として知り合った妾奉公の女に翻弄される勝次。
オランダのキャピタンから譲られた拡大鏡の復元に挑戦する耕太。
飛脚を使い、他国に販路を得ようと企てた清一郎。
本草学者の写実絵に魅せられるおゆり。
勝次とひなたの母親の兄夫婦が経営する二つの店、花鳥茶屋と鴨料理屋があらぬ風聞により客足が減る。挽回策として催した写し絵だったが、素人の浅はかさで失敗。
勝次が失恋した妾の旦那の怪しい挙動を調べてみると、風聞の元はその旦那だとわかり、心配事が一気に解決する大団円。
気持ちよく読めた。また一人、注目すべき時代小説の女流作家ができた。