江戸時代の浮世絵師葛飾北斎と彼の娘お英を描いた物語。

信州小布施の豪商高井家の総領息子三九郎が北斎の家を訪ねた場面から話は始まる。絵が好きで、京都の絵師のもとで十年修行した三九郎だが、北斎の絵に魅せられていて、なんとか北斎の弟子になりたいと訪れたのだが。その絵の中に流れるときまでも描き止めた北斎の絵。どんな目を持っているのか知りたいし、自分も得たいと願う。
好物をとられたと血相を変えて猫を追いかける年増の女に出くわす。背が高い三九郎を火の見櫓と呼ぶ、口が悪い女だが、どうやら北斎の娘お栄らしい。彼が世話になっている商家を口にすると、打って変わって父北斎に紹介する。
足の踏み場もないほど雑然とした屋内。それでいてほしいものがどこにあるのかをちゃんとわかっているらしい。北斎が絵を描きやすいように、あえて整理をしていないと言う。やぐらこたつに潜っている老人が北斎とははじめは信じられなかった三九郎だが、彼の前で絵筆を走らせたのを見ると、まさしく北斎。
枕絵を描くのは当時の絵師なら当たり前。父北斎より女を描かせたらお栄の方がうまい。北斎の手伝いと言うよりは、代筆で枕絵を描くお栄。真に迫った描写に変な気を起こしてしまう三九郎。
弟子になりたいと言う彼の言葉に、はっきり返事がもらえぬままに、北斎父娘に関わっていく三九郎。
彼がここで知り合ったのは兄弟子とも言える善次郎。口は達者でいい加減なやつだと思っていたら,美人画では当代一の絵師渓斎英泉。出戻りのお栄とも体の関係があり、絵師としてのお栄に惚れている。

この頃世間で出回っている北斎の偽絵。それに三九郎も巻き込まれていく。お栄の姉の子で、北斎の孫に当たり、絵の才能がある重太郎。絵師の父親と偉大な絵師北斎を祖父にもつ彼は、なまじ絵の才があるために、幼い頃から絵を描かされて辛かった。真似をすれば誰よりもうまいが、自分の絵が描けないで苦しみ、荒れた生活をしていた。誰にも真似できない個性に溢れ、次々と画風を自己流に変えていきながらも、そのすべてが北斎まんだらといえる世界になる。真似しても越えられない高峰の贋作で仕返しをしていた重太郎。堪忍袋の切れた北斎に利き腕を使えなくされてしまう。

晩年の北斎を故郷小布施に呼び、彼の絵を残した三九郎こと高井鴻山。