男だけを扱う老舗の人宿丁字屋、そこで出会った円マドカと清太郎。二人の希望は走るのが好きなことから飛脚人。折しも瀬戸物町の飛脚問屋、十六屋から求人が来ていて、清太郎はすぐに採用されたが、円は女だとわかり、女専門の人宿を紹介された。そして二人とも同じ十六屋で働くことになったが、店は寂れていた。主とその母親が胸の病で寝込んでいた。移るのを恐れて、雇っていた飛脚が次々とやめてしまい、残るのは一人きり。そのための求人だった。店を仕切るのは豆腐屋から嫁入りした嫁のおかみさん、色気が溢れる三十路の若さ。
試しに頼まれた遠くの豆腐屋から一丁の豆腐を買って帰る際の円の早さと心遣いが評価され、下働きではなく、飛脚として雇われる。

二人には秘密の目的があった。円のふるさとは筑波の山の中、浪人の父が竹細工で生活していた。円が幼い頃に、母は若い男と夜逃げしたと言われていた。その母、あぐりをさがすために飛脚になった。
清太郎は御家人の次男。いざ合戦の際には首を切られて士気をあげるという奇妙な役目。黒船が来て、いつ外国と戦になるかもしれぬと不安を感じる跡継ぎの兄が病に伏し、自分が身代わりにされるのを嫌って家を出た。逃げ足を鍛えるためな一緒に足を鍛えた弟が先に家を出ていた。その行方を探そうと清太郎は飛脚になった。

同業者とのはやがけ競争や悪巧みをしのいだ二人は次第に心が近づく。

少ない飛脚ではいくら依頼人がいても対応できない。少人数でもやれる商売のやり方を清太郎は考え付く。遠方への飛脚は諦め、府内だけにかぎり、あちこちの町に取りつぎ所を頼んで、飛脚は一人で目的地まではいかず、次々と引き継いでいく。それだと料金を安くできるし、早く届けられる。そうした町飛脚を思い付いた。人宿の主やなじみになった薬屋の主が賛同して、協力してくれることになり、山風サンプウという名前で始めた町飛脚は評判となり、繁盛する。宣伝と円の母親探しをからめて、あぐりという名前の女を知らせてもらう催し。それにより、ついに円は自らの出生の謎にたどり着く。母だと思っていたあぐりは捨て子だった円を育ててくれた女中だった。
清太郎の探していた弟はライバルの飛脚問屋にいることがわかり、兄弟再会を果たす。


円と清太郎の行く末は次巻で描かれるのだろう。

やはりよかった