伴鍋次郎は旗本、遠からず西丸書院番士として出仕する。通っていた剣道場の師範高萩怱吾の娘八千代を嫁にして二年、懐妊した。役にもつき、生まれてくる子を思い、幸せ一杯の鍋次郎。
そんな彼が町中で奇妙な老人と出会う。彼の顔を見て正気を失い暴れたり、二度目には川に飛び込んで死んだ。
その原因を探していた彼が偶然蔵で見つけた父の日記と、我が名を記された位牌。生まれたとされる日の前後に几帳面な父が何も記していない。
両親に問いただすと、幼い頃に養子になったことがわかる。二人の息子を出産直後になくした母は次男の生まれ変わりとして鍋次郎を育てた。
実の両親について問いただすも答えてくれない。妻の父であり、自らの剣道の師範である高萩に尋ねると、詮索しない方がいいと言う。
自らの源を知らないでは生きていけないとさらに問い詰めると話してくれた。

奇しくも、彼がなろうとしている西丸書院番士になったばかりの彼の実父松平外記にまつわる騒動のことを。

そして外記を主人公にした物語が語られる。
西丸小納戸役を勤める父の働きで、書院番士となった外記が遭遇したのは、将軍の親衛隊と言える書院番士たちの腐敗。平和になれて、本来の役目を忘れ、日々の退屈を紛らすための暇潰しに始まった新任へのいじめ。それが次第に慣例化して、いじめをうけたものね気持ちの傷にも気づかなくなった。
あらぬ盗みの疑いを受けたり、いたずらをされたり。はじめはわけもわからなかった外記。いじめで気鬱になりやめた番士。穴埋めに我が子を入れたいと思った老番士。そこへ十八松平の縁につながる外記が若年寄りの推挙で任官。息子の役を奪われた老番士は一見親切そうに案内役を勤めていたが、腹に一物があった。しかし、老番士も操り人形だった。陰で糸を引く番士がいた。
妻へのあらぬ噂までたてられて、堪忍袋が切れた外記は城中で刃傷に及び、五人の番士を惨殺した。自害して果てたことで、原因が追求され、腐敗した書院番は少しはよくなる。
鍋次郎はその外記の次男であった。親友の高萩の計らいで、伴家に養子に。
外記のいじめの首魁二人は刃傷の日休んでいた。肝心な敵をうち漏らした亡き実父の敵を打とうとした鍋次郎だが。ひとりはすでになく、残りを付け狙うが、川に流された孫娘を助けて、思いを変える。肉親の愛に気づいた鍋次郎。実父の手作りの根付けのふくろう。不・苦労を願う親心をかみしめる。