御薬園同心水上草介シリーズ第一作。
小石川御薬園は薬草栽培と、御城で賄う生薬の精製等を行う幕府の施設。大奥にへちま水も献上している。
薬園は四万五千坪もあるが、中央を貫く仕切り道で、東西に分かれ、東側を岡田家が、西側を芥川家が管理している。そして東側の仕切り道沿いに小石川養生所があり、そこには町奉行所の見廻り方同心が訪れる。

主人公は西側の芥川家に仕える御薬園同心の水上草介。二十歳で跡を継ぎ二年。手足がひょろ長く、たよりない様子から古株同心からまるで水草のようだと言われてから、いまでは薬園の誰からもそう呼ばれる。本人が否定もしないから。

親代々の仕事だから薬草や植物の知識はそれなりに詳しいし、なにより植物が好きな草介には天職ともいえる。植物は彼を急かすこともないし、手をかければかけただけ応えてくれる。だから嬉々として植物の世話をすることにうむこともない。

そんな草介のまわりで次々に起きてくる事件や騒ぎを、植物の知識がもとになるヒントにより解決に導いていく。

芥川家の娘千歳は十八でかわいいのに、お転婆で、若衆姿で剣道場に通い、自宅の庭でも竹刀を振り回す。
だから草介のことを頼りないと思い、時に叱り飛ばすくせに、密かに彼を慕う乙女心もある。二人の恋の行方も楽しみだ。

養生所で働く女およしをめぐる騒ぎで、千歳の道場での兄弟子で、養生所同心だった高橋の縁結びを勤める草介。
養生所に新任した蘭法医をめぐる騒ぎがきっかけで、草介の知識の広さが認められ、周囲から長崎へ留学して西洋についても見聞を広めてはどうかと勧められる。しかし、出世したいとかより広い世界へ出たいという野心がない草介はひとまず断る。
時代は天保。草介に留学を進めた尚歯会の高野長英と言ったら、このあとにどうなるか知っている分、あまり草介とは関わってほしくない。そんな複雑な思いがある。まあそれだけ感情移入してしまうほど、草介に魅力を感じているんだろうな。

シリーズ二作目は引き続き読むつもりだが、三作目は貸し出し中だったが、早く読んでみたいな。