第九十三回の直木賞候補となった中編のタイトル作に、デビュー作で歴史文学賞佳作に選ばれた短編が収められた作品。
タイトル作は幕末の江戸で、由緒ある草創名主二十四家の一つで、九代目として神田付近の名主を勤めた斎藤市左衛門の幕末から明治への転換期を生きた様を描いた作品。
町名主の顔の他に、市左衛門には江戸の町のガイドと言える『江戸名所図絵』や町人たちの年表である『武江年表』を出したという月岑といい文筆名を持っていた。祖父の代から書きはじめ、三代にわたり書き込まれて、市左衛門が書籍として完成させた。
安政の大地震のあとは町を見回り、その惨状を書き留め、アメリカ大使ハリスの接待のために用意された吉原の女郎を送り込む秘密の仕事に手を染めたり、何かと気苦労な仕事をする。
あっけなく幕府が瓦解し、幕府時代の役職が次々と廃止されていくなかで、仲間の名主は次々と商売替えを進めていくも、彼は名主は幕府の下部機関だけではなく、庶民である江戸の人々の暮らしを守る役目もあり、形は変えても新政府でも残ると信じ、名主であることをやめなかった。人によっては新政府のもとで働くことを裏切りと見るものがあることを承知しながら、あらたな東京の区長となり、その生をまっとうした一人の男の生きざまが描かれている。少し固い印象もあるがなかなか読みがいのある作品だった。
所収された短編では幕末に『江戸繁盛記』をだして知られた町の儒者だった寺門弥五左衛門の幕末を描いた作品。亡き父が仕えていた水戸藩への仕官を願いながらも、ついにそれに挫折した庶子だった弥五左衛門。仕官を諦めて、武家社会へ背を向け、町人道を貫いた戯作者式亭三馬を背に負いながら、書き上げた漢文臭い本が、なぜか評判となり世に広まる。男の生き地だけでかいたような作だったが。水野老中の折りには町奉行鳥居に呼び出され処罰もされたが屈することはなかった。知り人にきいた、自分によく似た男、新撰組の土方のことを気にしながら維新前夜に世を去った。
タイトル作は幕末の江戸で、由緒ある草創名主二十四家の一つで、九代目として神田付近の名主を勤めた斎藤市左衛門の幕末から明治への転換期を生きた様を描いた作品。
町名主の顔の他に、市左衛門には江戸の町のガイドと言える『江戸名所図絵』や町人たちの年表である『武江年表』を出したという月岑といい文筆名を持っていた。祖父の代から書きはじめ、三代にわたり書き込まれて、市左衛門が書籍として完成させた。
安政の大地震のあとは町を見回り、その惨状を書き留め、アメリカ大使ハリスの接待のために用意された吉原の女郎を送り込む秘密の仕事に手を染めたり、何かと気苦労な仕事をする。
あっけなく幕府が瓦解し、幕府時代の役職が次々と廃止されていくなかで、仲間の名主は次々と商売替えを進めていくも、彼は名主は幕府の下部機関だけではなく、庶民である江戸の人々の暮らしを守る役目もあり、形は変えても新政府でも残ると信じ、名主であることをやめなかった。人によっては新政府のもとで働くことを裏切りと見るものがあることを承知しながら、あらたな東京の区長となり、その生をまっとうした一人の男の生きざまが描かれている。少し固い印象もあるがなかなか読みがいのある作品だった。
所収された短編では幕末に『江戸繁盛記』をだして知られた町の儒者だった寺門弥五左衛門の幕末を描いた作品。亡き父が仕えていた水戸藩への仕官を願いながらも、ついにそれに挫折した庶子だった弥五左衛門。仕官を諦めて、武家社会へ背を向け、町人道を貫いた戯作者式亭三馬を背に負いながら、書き上げた漢文臭い本が、なぜか評判となり世に広まる。男の生き地だけでかいたような作だったが。水野老中の折りには町奉行鳥居に呼び出され処罰もされたが屈することはなかった。知り人にきいた、自分によく似た男、新撰組の土方のことを気にしながら維新前夜に世を去った。