正直少し期待はずれだったか。田沼時代の初期が舞台ということで、悪の張本人を成敗することもできない点で、スカッとしない。

『船宿たき川捕物暦』の続編らしい。前のは昔読んだ気はするが全く覚えていない。

主人公はもと白川藩の武士で、父と二人録を離れて江戸へ。小野派一刀流佐伯道場の師範代として身を過ごしていた真木倩一郎は、船宿たき川の娘の婿となり、二代目米造を襲名する。船宿の亭主は表向きのかりの姿で、実態は江戸の目明かし三百人を束ねる、蚯蚓御用の元締めが真の姿。
二代目を襲名して三月、ようやく挨拶回りなどが過ぎて落ち着いた米蔵に妙な話が持ち込まれる。
吉原手前で船宿を営む船十の主は分家筋の目明かし。その彼が女の着物がはみ出したかごを目撃し、不審をいだいてあとをつけると、有名な料亭八百善に入った。その後、店の長女の病死が届けられた。あのかごは何だったのか、疑問を抱いた彼が米蔵に相談を持ちかけたことから探索は始まる。

まずはかごを突き止めるように指示を出す。八百善に聞き込みにいった手下が、浪人ものに襲われて重傷をうける。さらに米蔵の身近にすごい殺気を放す侍の影が。

八百善には北町奉行の内与力、札差し富士武、それに老中田沼が出入りしていた。死んだ娘は実は女装した長男。なぜ女装していたのか、なぜ死んだのか。死んだ場所は内与力の手引きで貧乏後家人の妻女との合挽き宿だった。
次第に事件の全貌がわかっては来るが、田沼には手は出せない。どこまですすめるのか。富士武が長屋の少年にいたずらをしようとした件で捕まえようとした米蔵だが、その前に江戸を騒がす盗賊に見せかけて、一家皆殺しとなってしまう。その事実を突きつけて、八百善の口を割らせて、こちらへ引き込むことはできたが、そこまで。内与力や田沼までは手が伸ばせない。

手下を傷つけた浪人は賭場あらしをした板前とあっているのを見られて声をかけられて、手を出しただけで、悪気がないことを知り、米蔵は不問に付す。

不審な事実の裏の全貌が明らかになったものの、これといった悪人は誰も捕まえられないままで終わり、少しつまらなかった。やはり下手人をあげてスカッとしたいな、捕物なら。
米蔵の真の姿にかんする設定とか見ると、単なる捕物というよりは田沼を追い落とすまでの政治的な確執が背後にあるようだが、どうも中途半端で面白くないと思った。