時は天保時代の江戸。京橋で踊りの師匠をしている三代目水木歌仙。美人の彼女は名女形五代目瀬川路考に生き写しと言うので評判になった。四十路を迎え、貫禄がついた彼女はえこひいきしないことから、弟子にも人気。
その弟子の歌吉は六歳で入門、十三で名取になり、歌吉と名付けられた。それから五年たったこの日、歌吉ははじめてお狂言師の一座に加わる。大名旗本家の奥向きに参上して、踊りや芝居を見せる女ばかりの一座。

その日の帰り道に彼女は家業の籠屋に入ったばかりの二人の籠に乗り、さらわれてしまう。行った先はとある商家の隠居所で、そこには彼女の父の兄である本家の伯父が待っていた。彼女をさらった新入りの籠屋は衣服を改めて挨拶する。彼らは公儀の目付けに仕える小人目付けだと名乗り、頼みごとをする。歌吉の姉弟子が今は旗本の妾になっているが、その旗本のことを調べている。姉弟子と話をして、旗本のことを調べてくれないかと。天保の改革により庶民があえいでいる上、幕閣にも水野老中に反発するものが多いとき。老中の三本柱の一人が目付けをしている問題の旗本榊原。悪事の証拠を見つけて失脚させるために手伝ってほしいと言う。
素人の身でと最初は断ったが、正義感の伯父に無理やり承知させられてしまう。

お狂言師としての初舞台の前日、稽古帰りの歌吉を、弟子仲間の糸に襲われ、顔に傷を受ける。ノコギリの傷は跡が消えぬとわかり、一時は絶望した歌吉だが。こんな顔では嫁にはいけないから、踊りの師匠で身を立てようと、踊りの稽古を再開しようとした。そんな歌吉を叱る師匠。傷跡は化粧などで隠せるはず、お狂言師の道を諦めるなどもってのほかだと。師匠と二人研究して、傷跡を隠す手段を見つけ、ついにお狂言師の初舞台で藤娘を踊る歌吉。

小人目付けに頼まれた方はなかなかすすまず、その間、顔を傷つけた糸の顛末やら、榊原の腹心である小人目付けに狙われたりと、歌吉の回りで騒ぎや危険が起こる。老中水野は失脚するも、裏切って栄進する榊原は勘定奉行に。水野が復活するという噂が流れ、仕返しを恐れ、悪事の証拠隠滅を図る榊原や取り巻き商人たち。その機を利用して歌吉を囮にして、小人目付けたちは榊原らの悪事の証拠を手に入れ、榊原は罷免される。

なかなか面白い。続きも読みたくなる。