タイトルには、蘊蓄紀行という角書きがついているが、これは清水さんがつけたものというよりは,編集者が分かりやすくするためにつけた言葉かもしれない。

清水さんが思い付いた銅像ウォッチングとは、旅で訪れた地を銅像を介して、いくらか理解すること。地理と歴史の交差点を見ることだという。
なぜその銅像がその地にあるのか。その町を作ったのか、出身者なのか。あるいはその町に大きな功績を残したのか。だとすれば、その人の人間性の一部がその町に有形無形を問わず残されているのではないか。

清水さんは愛妻と共に旅を続ける。出発前に、夫人がネットを調べて、銅像があるかどうか、どこにあるのか。さらにどこに泊まれば便利か、どんな行程でいけば最短で回ることができるか。つまり夫妻による旅といえる。

清水さんが思い付いた銅像のある人は、次の十人。
仙台の伊達政宗
高知の坂本龍馬
岐阜、安土の織田信長
横浜のヘボン
金沢の前田利家
甲府の武田信玄
神戸の平清盛
東京の太田道灌
鹿児島の西郷隆盛
さらにサマルカンドのティムールも取り上げている。

最後のティムールを取り上げたのは、銅像が有名だからではなく、以前にいったトルコ、その源流と言えるのが中央アジアのウズベキスタンにある古都サマルカンドとその町を作ったティムール。ジンギスカンにより滅ぼされる前には人口五十万人の大都市だった。モンゴル系のティムールはジンギスカンの子孫に仕えていたが、次第に周辺を征服して一大帝国を築き上げる。南はインドに達し、東は明を攻撃しようとし、北はロシアの草原地帯にまで、西はトルコやエジプトを滅ぼした。モンゴル系でありながら、定住する都市を建設した。その名残を見定めるために清水さんは旅に出た。

歴史に関わる点で、どこも興味深く読んだが、やはり一番印象的なのは金沢だな。私が大学生活を過ごしたのは金沢城内。卒業後に移転して今は公園になっているそうだが。
石川門下に初代の殿様利家の像があるなんて初耳だった。知らなかった。建てられたのは昭和五十七年だと、もう私はいなかったんだ。うっかりしていたわけでないとわかり安心。

もうひとつ興味深いのは私の住む岐阜市に触れた織田信長の話。それと最近明治時代の小説を読んでいるから、ヘボンの話も興味深かった。
続編は書かれないのかな。