なんとも奇想天外な話。あのときああしていれば結果は変わったものになっていただろう、そんなIFものはよくあるが、清水さんは幕末の日本に架空の日本びいきのフランス人を登場させることで、幕末の様々な事件や騒動をひっくり返して、違う意味や結果をもたらし、幕末の歴史全体を見事にひっくり返す。

ロンドンのテムズ川で溺れかけたフランス人の貿易商の息子アナトール・シオンは、日本人に救われたことから大の日本びいきとなる。当時六歳だったシオン。
アメリカのゴールドラッシュでわくカリフォルニアでシオンは漂流民万次郎と出会い、日本の情勢について話したりして親しくなる。
帰国して英語の通訳として土佐藩に雇われた万次郎。幕末の英傑となる人々と親交を深める。坂本龍馬など。
一方日本語を学べるところがあると聞いたシオンが訪れた上海では、六歳の彼を助けてくれた尾州出身の音吉と再会し、日本語を学ぶ。鎖国のために帰国できない音吉。国交がないフランス人も日本には入れない。シオンは唯一日本にはいることができるオランダ人に扮して日本の地を踏む。
ペリーの相手に困っていた幕臣川路と知り合い、助言するようになる。後の勝海舟とも知り合う。攘夷と尊皇に揺れる幕府に意見書をあげて改革を進める。シオンは海舟の仲立ちで薩摩の大久保とも知己を得る。
ハリスの来日でついに不平等な条約を結ぶ幕府。シオンは次々と、福井藩の橋本左内、薩摩の西郷と知り合い、長州の吉田松陰と知り合う。幕府に追われる彼らを京の地で助けた黒頭巾はシオンだった。そんな折りに起こった安政の大獄。捕まった松陰はシオンの機転で助けられ、遣米使節の一員となる。さらにシオンはその美貌で攘夷派の天皇を開国派に変えてしまう。フランスの後押しで軍制改革を進める幕府と、イギリスの支援で倒幕も辞さない薩摩長州。両者に顔が利くシオンの働きで、幕府は大政奉還し、新たに選挙により大統領を選ぶことになる。将軍慶喜、優勢に困惑する西郷のために、新たな憲法を制定させ、選挙に足かせをつけることを提案するシオン。選挙を予備選挙に変える。明治と改元して迎えた本選挙の立候補者六人は、岩倉具視、勝海舟、西郷隆盛、榎本武揚、桂小五郎、近藤勇。さらに予備選挙の当選者、徳川慶喜を加えた七人で争われる初代日本大統領。そんな世界だったら今の日本はどうなっていたのだろうか?