昨夜、読むか読むまいか迷っていたが、読みかけたら、登場人物の行く末が気になって、最後まで一気に読んでしまった。

タイトルの「あどれさん」はフランス語で、若者を表す言葉。幕末軍制改革をした幕府の軍を指揮したフランス人が、伝習生に呼び掛けるときに使った言葉。
物語は幕末から維新の混乱期を生きた幕府側の若者たちを描いた作品。
主人公と言えるのは小納戸役の旗本を兄にもつ次男坊久保田宗八郎。これは七月始めごろに読んだ松井さんの『明治開化事件帖』シリーズの主人公の前日潭とも言える。講武所に通い、剣の腕もあった宗八郎が、兄嫁に女を意識するようになり、家を出て長屋暮らし。鉄砲を相手に剣では太刀打ちできないと、投げやりになり、芝居を見ることに熱中。芝居小屋で囃し方をする貧乏旗本片瀬弥市郎と知り合い、その勧めで、浅草寺内に住まいする芝居作家、寺内の師匠、河竹新七に弟子入りする。
この作品では宗八郎と共に、弥市郎の弟源之介も主人公。身を持ち崩し、屋敷に寄り付かない兄のために困惑する源之介。次男ということで早くに幼馴染みの娘と婚約、養子先も決まっていたのに、肝心の我が屋敷の行く末が決まらず、養子にもいけないうちに、幕府は軍制改革。陸軍に入ることになった源之介は精一杯頑張ったのに、あれよあれよと言う間に幕府が崩壊。謹慎する将軍に代わり、北関東を転戦するも、結局命からがら江戸に戻った源之介を待っていたのは悲惨な状況。婚約者の娘は兄弥市郎の奸計で苦界に。品川まで落ちた婚約者を見つけた源之介は心中して亡くなる。
弟の婚約者を騙して苦界に落としたことを知った宗八郎は弥市郎を半死半生の目に合わせるものの、どうしようもない。
芝居町にひたって五年あまり。本気で芝居の世界に入ろうとした宗八郎だが。彰義隊には加わらないと決めたものの、気になって出掛け、官軍の将兵の死体を冒涜する振る舞いに腹をたて、決闘し倒すが、止めを指さなかった。それが仇となり、芝居小屋で、今は維新政府の高官となった男に見られ、逃げ出すはめになる。馴染みの品川のもと女郎と夫婦になり、北海道の開拓事業に参加した。
軍制改革で、幕府の従来の武官が廃止されたのを契機に、宗八郎の兄は旗本身分を捨て、横浜へいき商人となる。先見の明があるようだ。

このつづきの話が『銀座開化事件帖』になるようだ。