松井さんの小説家としてのデビュー作。もうひとつの写楽を描いた作品とも言える。
主人公は上方の売れっ子芝居作者五兵衛。先程読んだ並木拍子郎シリーズで師匠の五瓶というのと同じ人物。
その五兵衛が今、大道具の彩色方である職人彦三に頭を下げて頼んでいる。五兵衛は江戸にいこうと思っていた。江戸で自分流の芝居を作りたいと。それにはバックとなる大道具も自分流にしたいから、先触れとして江戸へ行き、調べてほしいと。二人の出会いは十年前、当時から作者として知られていた五兵衛にズバリとものを言ったこと、しかもそれで作者の視点でしか舞台を見ていなかった五兵衛の不明を明らかにしたことで、彦三に注目していた。自分に似た資質を感じていた。
売れっ子作者の五兵衛が上方を去り江戸に向かうのは、周囲に秘密にしているだけになかなか出発できない。
一方、一足先に江戸に行き、本の版元で知られた蔦屋に紹介されて、彦三は好きな絵で注目された。折しも山東京伝が手鎖五十日の裁きが降り、蔦屋も身代半減の罪となった。失った財産を取り戻すべく新たな作者を求めていた蔦屋にとって彦三の絵は素人くさいが目を見張る面白さがあった。そして蔦屋の肝いりで絵筆に専念することになった彦三は、いつしか五兵衛と離れていった。
ようやく江戸入りを果たした五兵衛だが、最初は戸惑うことばかり。上方と江戸では芝居の経営のしかたも違えば、芝居の中身も色々制限があり、言われるままに書いた最初の芝居はさんざんな結果に終わる。一度は断念しかけた五兵衛を翻意させたのは、若かりし頃に知り合った役者、当代の立ち女形瀬川菊之丞。先代の死後に遺言により上方からよばれて養子となった当代。大所帯を背負う苦労もあったようで、再会直後にはあまり話もしなかったが、最初の芝居での失敗に詫びを入れる五兵衛を力付けてくれた。
どうせ失敗するのなら自分の好きなように芝居を作ってみたい、それでダメなら帰るだけ。その心意気が通じたのか、あるいは人の情は東西かわりないことが証明されたのか、二作目以降は評判となるほどの成功をおさめる五兵衛。
蔦屋同伴で会いに来た彦三はもはや芝居に戻る気はない様子。一時人気を読んだ人物画もまもなく消え、なじみとなった深川の女郎といるところを奉行所の手入れが入り、以後彦三は行方知れずとなる。
主人公は上方の売れっ子芝居作者五兵衛。先程読んだ並木拍子郎シリーズで師匠の五瓶というのと同じ人物。
その五兵衛が今、大道具の彩色方である職人彦三に頭を下げて頼んでいる。五兵衛は江戸にいこうと思っていた。江戸で自分流の芝居を作りたいと。それにはバックとなる大道具も自分流にしたいから、先触れとして江戸へ行き、調べてほしいと。二人の出会いは十年前、当時から作者として知られていた五兵衛にズバリとものを言ったこと、しかもそれで作者の視点でしか舞台を見ていなかった五兵衛の不明を明らかにしたことで、彦三に注目していた。自分に似た資質を感じていた。
売れっ子作者の五兵衛が上方を去り江戸に向かうのは、周囲に秘密にしているだけになかなか出発できない。
一方、一足先に江戸に行き、本の版元で知られた蔦屋に紹介されて、彦三は好きな絵で注目された。折しも山東京伝が手鎖五十日の裁きが降り、蔦屋も身代半減の罪となった。失った財産を取り戻すべく新たな作者を求めていた蔦屋にとって彦三の絵は素人くさいが目を見張る面白さがあった。そして蔦屋の肝いりで絵筆に専念することになった彦三は、いつしか五兵衛と離れていった。
ようやく江戸入りを果たした五兵衛だが、最初は戸惑うことばかり。上方と江戸では芝居の経営のしかたも違えば、芝居の中身も色々制限があり、言われるままに書いた最初の芝居はさんざんな結果に終わる。一度は断念しかけた五兵衛を翻意させたのは、若かりし頃に知り合った役者、当代の立ち女形瀬川菊之丞。先代の死後に遺言により上方からよばれて養子となった当代。大所帯を背負う苦労もあったようで、再会直後にはあまり話もしなかったが、最初の芝居での失敗に詫びを入れる五兵衛を力付けてくれた。
どうせ失敗するのなら自分の好きなように芝居を作ってみたい、それでダメなら帰るだけ。その心意気が通じたのか、あるいは人の情は東西かわりないことが証明されたのか、二作目以降は評判となるほどの成功をおさめる五兵衛。
蔦屋同伴で会いに来た彦三はもはや芝居に戻る気はない様子。一時人気を読んだ人物画もまもなく消え、なじみとなった深川の女郎といるところを奉行所の手入れが入り、以後彦三は行方知れずとなる。