並木拍子郎種取帳シリーズ第三作。

師匠五瓶の老いらくの恋ならぬ浮気をなんとか納めた暮れから、しばらく師匠のもとを訪れてなかった拍子郎。芝居のネタとなる町の噂などを調べてくるのが、彼の役目。しかし至って平和で、これといった騒ぎもないため、足が遠退いていた拍子郎。これまでの彼の武勇伝で、芝居小屋やその周辺で名を知られるようになった拍子郎。若手の役者から頼まれごとをする。芝居を見に来る武家屋敷の女中、その接待の場で相方の話し相手になってほしいと。渋々承知した拍子郎は、その女中から役者が預かった髪飾りの盗難事件に関わり、幸少ない同心屋敷出の女中と短い春のような関わりを持つ。

囲われものの女が殺された。太鼓打ちの容疑者には、その時間住まいの長屋で稽古をしていた。アリバイトリックを見破ると言うミステリータッチの作。

立花屋の主催する俳諧の席に招かれた五瓶とおあさの父親で料理茶屋の主和泉屋。彼らは立花屋と売れっ子芸者の怪しいそぶりを見かける。頼まれて、立花屋と芸者のことを調べ始めた拍子郎。浮気かと思ったら、昔の浮気でできた娘とあった父娘の愛と、それを利用して金儲けをたくらんだ芸者のたくらみだった。

生まれ年により前世や後世を占う三世相なる小冊子。占いにこるのは女だけか。芝居小屋付近で評判な町医者が通り魔にあい、死ぬ。易占いに通っていた女房と下男。自身の出生の秘密と兄の跡継ぎになるかどうかで迷っていた拍子郎は、ズバリ言い当てられて困惑。評判の名医も裏では酒乱で女房に暴力を振るっていた。女房に同情する下男をたきつけたのは占い師らしい。

酒問屋の老舗の若旦那が一昨年勘当され、銚子で働いている。主が病で倒れ、なんとか死に目に会わせてやりたいが、若旦那の行方が不明。頼まれて行方探しに赴いた拍子郎。女中だった実の母と引き離された若旦那に、自身の境涯と似ていることに同情した拍子郎は、銚子の醤油作りに骨を埋めるつもりの若旦那を説得して、一旦江戸に帰らせることに。別れを惜しむ銚子の娘に、おあさを重ねる拍子郎。

兄からは跡を継ぐかどうか迫られている拍子郎。断って、養子でも来たら、拍子郎の家はなくなるも同然。そこまでして芝居に生きるかどうか。それを決断しないことには、おあさの気持ちに答えることもできない。優柔不断の拍子郎、どうするんだ?