どうやらラジオにまつわる短編集のようだ。最初の一編のあと、何か誰か関係があるのかと、注意して読んだが、バラバラの短編集。ただどの主人公もラジオに癒しとか楽しみを持っているという共通点があるようだ。そういえば著者は創作ラジオドラマ大賞を受けたのが、作家としての出発だった。
最初の編では七十を迎えた老女がケアハウスに入居するところから始まる。三人の息子も独立し、十年前に夫も見送って一人になった河西信子は、最近転倒して歩行困難になり、別居してる息子の嫁に世話になるのも嫌で、積極的にホームを探し、ひとまずはケアハウスに落ち着く。彼女の趣味は読書とラジオ。それもお笑いタレントがパーソナリティをつとめる番組のファン。昔流産してなくした娘がきっかけで聞き始めた深夜ラジオ。知らず知らず聞きながら、彼女は生まれなかった娘相手に話をしていたようだと、末っ子の息子に指摘されてはじめて気づいた。母と話したくてラジオを聞き始めた息子だったが、母の目は彼にではなく、幻の姉を向いていたと。それを聞いてはじめて息子に向きを変えようとする。

中途半端に大学を出て就職したものも長続きせず、今は東南アジアを放浪するようにラーメン店に勤める若者裕也。彼の高校時代の友達がどうも前の短編の末っ子のようだ。深夜放送を録音した機器を餞別に裕也に渡し、それが落ち込んだ彼を慰めた。

小学生の娘を持つ主婦聡子は、ラジオドラマを執筆している。そのタイトルがどうも短編のタイトル。聡子は執筆の傍ら、ドラマ教室のブログを見るのを楽しみに、励みにしていた。

中学に入ってから疎遠になった親友に話したいことがある中学二年の来実。彼女の楽しみはラジオの子供相談室を聞くこと。人からダサいと言われるのが嫌で秘密にしている。ある夜、その番組で聞いた相談がどうもクラスメイトのいじめっこに似ている。その思いを休日の過ごし方という発表会で暴露。そのお陰か、いじめがなくなる。彼女の担任の教師がどうも最初の編の末っ子らしい。
となると彼を通じて全編が繋がる連作短編なのかな。

最後はラジオドラマの脚本家を目指す男の話。一度賞を得たために、見切りをつけるきっかけを失い、ずるずると彼女を待たせること五年。再度受賞したものの、別名義で同じ賞に応募したのが問題となり、ようやく小説家に転身することを決意する。

あまりよくわからないものが多くて、渡しには合わないかな