とにもかくにも最後まで目を通した、だけ。よくわからない作品。

主人公は国文学者の杉安佐子。
巻頭に描かれるのは彼女が中学生の時に書いた小説。女子高生と過激派の大学生の恋を描いている。交換日記のように友達に読ませただけの作品だが。これがどうやら警察や公安の目に触れたために、一時彼女の家の電話が盗聴されることになる。父親である歴史学の教授の師に当たる方が皇国史観の教授だったため、その教授を裏切って、生活史を専門にして認められた父親が恨みを抱かれて、盗聴されたのではないかと思っていたが。実際は中学生のたわいない話を真に受けて、盗聴されたのだと後にわかる。

幼い頃から泉境花の作品に親しんでいた安佐子は、専門は十九世紀の日本文学。世紀でくくれば、江戸文学から明治文学までを区別せずに研究できると言うのが彼女の持論だが。

研究室の主任教授が元禄文学学会の役付けになったことで、彼女は日頃目にかけてくれる教授から研究発表を頼まれて、テーマに選んだのは芭蕉。芭蕉はなぜ東北へ行ったのか。彼女なりの自説を発表したものの、聴衆の反応がない。ようやく発言した九州の名誉教授が批判した論拠が独善的で、思わず反論してしまう。そのせいか