『山田風太郎明治小説全集第二巻』。収録されている作品は、長編「幻燈辻馬車」の他、短編が三編「明治忠臣蔵」「天衣無縫」「絞首刑第一番」。
なかでもやはり長編が読ませるし、面白かった。ただハッピーエンドではないのが残念だが。

前に読んだ「警視庁草紙」が西南の役勃発までの時代だったが、今回はその五年後、明治十五年の早春から二、三年の時代が描かれる。明治の国家体制が強権で整備されつつある時代で、それに反発するように自由民権運動が次第に高まり、過激化しつつある時代が背景となる。

もと会津藩町奉行所の同心だった干兵衛は、官軍との攻防戦で妻を失い、息子と二人東京に出る。そして警視庁に勤めた彼らは西南の役に際して結成された抜刀隊に参加したものの、息子を失う。死に際の息子から言い交わした女がいて娘もできたと聞かされた干兵衛は、一人東京に戻り、旧藩時代に世話になった方の屋敷に捨てられていた孫娘を会う。男手で仕事をしながら育てるために、屋敷で不要になった馬車をもらい受け、箱馬車で生計を立てることを思い付く。
かわいい孫娘、雛にはいざというときには、幽霊となった父親を呼び出すことができる異能があり、しかも呼び出された幽霊の父親が呼べば、干兵衛の亡き妻で雛の祖母が呼び出すことができた。
それにより男手での孫娘の世話で困ったときには助けられた。

干兵衛と雛の親子馬車は評判となり、やがて自由民権の活動家たちと出会い、関わり、騒動に巻き込まれていく。最後には雛を捨てた母親に孫娘を託して、干兵衛は加波山事件の中に死に場所を求めに行く場面で、物語は終わっている。

活動家と彼らを探索する警察の密偵や政治家の私兵、彼らの二転三転する騒動に、否応なく巻き込まれていく干兵衛と雛。その行く末にはらはらしながら最後まで一気に読み終えた。

山田さんの明治小説は、これでひとまずやめておこうか。暗さとか悲惨な結末をあまり見たくない気分。

どうせ読むなら、もう少し明るいもの、楽しいものがいいなと思った。