連休初日、荒俣さんの『帝都物語異録』を半分くらい読んだところで、気分を変えたくなる。
やはり物語が、ミステリーが読みたくなるが、今借りている図書館本に浅見探偵はない。
傍らに積んであった松井さんのこれを読み始めたら、なかなかいい。最後まで読んでしまった。
松井版捕物帖というものか。

主人公は定町廻り同心の家に生まれた筧兵四郎。年の離れた兄があとを継ぎ、子もないところから、養子にしたいと言われている。
そんな兵四郎は芝居作者になりたいと上方から来た有名な作家並木五瓶に弟子入りして、並木柏子郎の名前をもらい、今は芝居の種となる町の噂や出来事を調べて、種取帳につけている。
そうして知った事件に関わることで、時には推理や解決に突っ走る。
素直だが、好奇心旺盛で、思い込んだら突っ走るタイプ。師匠の冗談を真に受けて、つっぱしり、それが糸口を開くこともある。

師匠は実在の人物で、巻末の解説によれば、松井さんの小説家としての第一作である『東州しゃらくさし』に出てくると言う。すでに借りている、それを読むのが楽しみになる。

若い男が主人公だと、当然マドンナが気になる。芝居町の裏通りで、料理茶屋を営む和泉屋の一人娘おあさ。母がなく、父の手で育てられた娘は一風変わっている。女らしさを感じないが、威勢がいい。化粧気もなく出歩くから日に焼けている。子のいない五瓶夫婦の家に出入りして、かわいがられ、板前顔負けの料理の腕を振るう。そんな絶好の時に、兵四郎はひょっこり現れては、ぼそぼそと町の噂を話始める。
最初は互いに気に求めなかった二人が、次第に互いを意識し、さらには思いを募らせていく過程が事件の裏で描かれていく。二人の仲はどうなるのか、それも楽しみとなる。
兵四郎が病身の兄の跡継ぎとなるのか、あるいはこのまま芝居作家となるのか。
シリーズは今、三冊か四冊ある。はじめは少しバカにして、借りてなかったが、一冊を読み終えて、続きを読んでみたくなる。