名探偵の浅見が住む街、東京都北区が今回の舞台。
浅見の母親も知っている地元の芸術家御子柴、彼の代表作である妖精と呼ばれる少女の裸像。ブロンズ像が御子柴家の玄関前にあったのが、盗まれた。知人の結婚式に夫婦で出ていた数時間の間に。一メートル近くの高さがあり、百キロほどの像は一人では運べない。閑静な住宅街で目撃者はいないが、近所の喫茶店で働く女性が、それらしきものが載ったワンボックスカーを近くの踏み切りで見かけていた。ナンバーを語呂合わせする彼女はナンバーの頭三桁を覚えていた。

それだけの情報しかないため、兄に頼み調べてもらうと、三代が浮かぶ。その中の大宮のレンタカーが怪しいと、調べてみると、借り主が判明。
それ以前に御子柴が開く教室にかよう女性から誘われて、彼女の自宅である大宮の旧家に行った浅見。独身の跡取り娘が連れてきた男ということで、婿候補として歓待された浅見。レンタカーの借り主は彼女の叔父さんだった。友人の引っ越しの手伝いをしたという叔父。

そのころ一人の男の死体が見つかる。ポケットにあった紙片に書かれていたのが、レンタカーのナンバー。

二つの事件に関係があるのかどうか、捜査は遅々として進まない。殺されたのは九州から流れてきたやくざ。

叔父さんが引っ越しを手伝った男は、競輪場の予想屋。殺された男にも予想したことがあり、はじめての客だから適当に、レンタカーのナンバーを書き付けて渡したらしい。
そんなことから二つの事件は別件だと判明。

御子柴先生が突然捜査の取り止めを行ってきた。密かに調べ始めた浅見は、妖精が大宮の女性やその叔母に似ていることに気づく。モデルではないか。
本人に確かめてそうだとわかる。しかも妖精を盗んだのも叔母さん。依頼者はなんと御子柴先生の奥さん。どうやら叔母さんと先生には不倫めいたことがあり、それで玄関先に安置された像を奥さんが嫌っていたらしい。今では先生も真相に気づいて、捜査を取り止めたらしい。
ほとぼりが覚めたら、像はどこかの公園にでも置けばよいと浅見は言う。叔母さんの土蔵に埋もれさせてはもったいないからと。

今回は殺人も背景で、本筋は殺人とは無関係な事件だった。あまり身近ではまずいからか。

山手線唯一の踏み切りがある街、今も市電が残る影の薄い北の街。そこに浅見探偵は住んでいる。