建築探偵シリーズの番外編の中編短編集。

最初と最後の短編で主人公となるのは、十三歳の庄司ゆき。
あの蒼が今や薬師寺香澄という名前で、臨床心理士の新米として、ゆきの通う学校のスクール・カウンセラーをしている。神代、桜井と共に家族のように住んでいる屋敷に出入りするゆきが興味を覚えているのはやはりイケメンの桜井らしい。顔だけでなく、推理力にも魅力を覚えているらしい。その桜井に隠していたことがばれていることに疑問を抱いたゆきがその謎解きをしようとする。話し相手は香澄、というよりはやはり蒼か。神代、桜井両者の日常のなぞミステリーに対する見解がうかがえる短編。

最後の編では、ゆきの友人の間で流行っているこっくりさんがテーマの短編。

第二作の中編では、美術部に入ったゆきが知り合った和風美人の先輩日色南。その先輩の母子関係が事件のもとになる。高名な彫金家と離婚し、娘南と二人暮らしをしていた母親は、とにかく夫の影を払拭し、娘ベッタリの母親。そんな母にしたがっていた娘がいつからか反抗心を育み、ついに母殺しをして、行方不明の父親に罪を被せようと画策したが、ゆきの頼みで乗り出した桜井が真相を見抜き、事件を未然に防ぐ。

三編目の中編がタイトル作。孤高で高名な建築家、その二人の息子も成人して建築家となり、父の事務所に勤めていた。兄が弟を殺す聖書のエピソードをなぞらえたような事件。行方不明の二人が見つかった時、兄は首吊り自殺をしていて、近くに頭を殴打されて死んだ弟が埋められていた。自殺する直前に兄は、別居している、一回り年下の腹違いの弟に電話して、自分はアベルだったのだと告白していた。
単なる兄弟間の争いだとは信じられない末っ子の高校生は友人の危地を救ったことがある桜井に事件の真相解明を依頼。というよりは真相に気づいたので、それが警察に知られているかどうかを知りたくて桜井を訪れた。気になった蒼は桜井と共に勝手に事件の真相を解明しようと乗り出す。

どれがよかったかということはないが、事件よりはシリーズものの、登場人物というのはやはりいいな。シリーズをまだまともに読んでないが、また読みたくなってきた。シリーズを最初から順番にというよりは、気になるものを読んでいけばいいのかもしれない。