今回の舞台は日本海沿いのいくつかの町。その昔北前船が行き交って栄えた港町。松浦、加賀、津屋崎。

ニッカウィスキー発祥の地余市でウィスキー工場見学客のガイドをしている三井所園子。五年前に父親の遺体が北陸の加賀の海岸で毒殺されて見つけられた。松前に行くと出掛けたまま失踪した父。なぜそんなところまで行ったのか、家族にもわからないまま、捜査は迷宮入り。園子の同僚の兄が浅見と大学の同期という縁で、調査を頼まれた浅見。

最初は見ず知らずの浅見に家庭の秘密を明かすことを躊躇していた園子と母親も、会ってみた浅見に好感をいだき、調査に期待はしないが、依頼する。

真面目で友人もいなかった父親はその出身についても、母親には明かしていなかった。何度目かのあとに、捨て子で施設に育てられ、後に養子となった事情だけは母親には明かしていたとわかる。実の両親や係累に関しては辛いことなので話したくないと。

手がかりを求めて、父親が残したものを調べてみると、土人形が大切に箱に入れてあった。裏には作者と思われる卯の印が。

父親の剛史が出かける折りに口にした松前、まずはそこを調べようとした浅見は、博物館で似た人形を偶然発見。同じ作者のものとわかり、北前船との関連に注目する。さらに過去を調べようとした新聞で、中学時代の剛史が生い立ちに関する作文で賞を受けたことを知る。

家族も知らなかった剛史のおいたち。そのルーツをたどるかのように、浅見は日本海を南下していく。昔、加賀で北前舟の船主だった一族が下関に移転。そこに後に大女優となった美人の令嬢がいた。絶頂期に半年アメリカ留学をしている。剛史が生まれた頃。もしかして彼女が母親ではないか。想像と類推を繋ぎ合わせて、浅見は人形の作家のもとにまで足を伸ばし、次第に真実に迫っていく。

元女優自身は知らないところで、回りのものが保身と財産確保のために、犯した犯罪。もと女優のたのみで、犯人を公にしないで、自害を許した浅見。

しかし園子は祖母と対面でき、父のなぞも解き明かされて、よかった。一族内での犯罪は難しい。世間に暴くことで騒ぎが広まることを思えば、犯罪実行者だけを断罪することで納めるのもいいのか。

剛史のルーツを追い求める浅見の探索は読みがいがあり、興味深いものだった。