京都五条署の新人女刑事片岡真子が夜九時に主任から現場へ行くように指示された。寺が多い地域にある広大な屋敷。
出先から帰った家主が室内に遺体を見つけ通報した。

真子が最初に出くわしたスーツ姿の長身の若い男性。彼こそが真子の相棒となる高藤警部。警察庁から府警本部に赴任しているキャリア。所轄刑事課の実務をみたいという。京言葉を隠さない真子に刑事らしくないと注意される。

以前は老舗の呉服屋の跡継ぎである家主向井は先代の死後、業績の落ちた呉服屋をやめ、商社を経営している。先代が残した屋敷を改造し池を枯山水にして、客の接待に使っていた。

その屋敷の庭を望む和室で見つかった首吊り遺体には奇妙な点があった。首に扼殺の指のあとがのこり、さらにその下に帯締めで絞められたあとがある。単なる自殺には見えないし、家主には見覚えがないという。

しかも二十歳前後の遺体の手にはリストカットのあとがいくつもある。
高藤の指示で庭を再調査した鑑識は、指輪をトップにしたペンダントを発見。さらに合成樹脂のバリらしき肌色の小さな欠片が遺体のパンツの折り返しから見つかる。

遺体の身元もわからない上、死の原因もはっきりしない。容疑者とされた家主向井の証言もなんかおかしいが、理由がはっきりしない。
自殺体を誰かが偽装したのか。屋敷以外から持ち込まれたなら、鍵なしでどうやって入ったのか。発見されたことから想像される犯人像は一致しない。

花街の日本舞踊の師範である母と暮らす真子は、幕末の英傑坂本龍馬の姉乙女を知り、女でも男社会に飛び込んでいく生き方を知り憧れていた。

尋問を受ける向井はのらりくらりと答えて落とせないまま。新たに帯締めの跡の下に、電気コードによる絞めたあとが見つかり混乱する。

歯の治療痕からようやく遺体の身元がわかる。長崎出身で高卒の三年前に家出していた。父親に虐待され、学校でも家庭でも居場所がなく、自殺を繰り返していた。そんな人たちの延命を勧めるエクステンドというNPOにたどりついて、ようやく進展する。被害者の話し相手を長年勤めていた山本。さらに山本にも事件当日に怪しい動きがあったことから、事情を聴くと、十五年前に失踪した妹が向井の屋敷で姿をなくしているので、向井を調べてほしくて、細工をして今回の容疑者にしたのだと。

時効までに山本の妹殺害を向井に認めさせることができるか?