東京新宿の一角に店を構える翡翠飯店。町のただの中華料理店。店の主だった祖父が死んだものの、家族は誰も涙を流さない。近所に住む祖父の知り合いの老人たちしか涙を流さない。

そんな家族に疑惑を抱いた孫の良嗣。祖父母の生まれがどこなのか、親戚はいるのか、墓はあるのか。家族のルーツに興味を覚える。

祖父母は戦前満州で出会い、一緒になったらしい。死亡保険の受け取りの際に見た祖父の戸籍では、父の上に二人子供がいたらしい。しかし、聞いたこともない。

祖父を亡くし意気消沈する祖母がもらした、帰りたい、という言葉。それはどこなんだろう。

祖父母がであったという満州はどんなところなんだろう。仕事をやめて、バイト生活をする良嗣は,無気力な生活をしていた。自分から何かをしたいとは思えなかった。それがなぜか満州にいってみたいと思った。

帰りたいと行っていた祖母を連れていこうと決意した良嗣は、同じようにプータローの叔父を連れて、三人で満州に旅立つ。

そのあとにいきなり語られるのは昭和十五年の若い頃の祖父。長野の養蚕農家の生まれだが、跡継ぎではないから何か仕事を見つけないといけない。そんなときに耳にしたのが、満州開拓団のはなし。条件はいいしと申し込んで満州へ。

しかし予想通りの景観には感動したが、生活は予想外に厳しい。痩せた農地での収穫もままならない上に、匪族の襲撃に備えて銃を持たないといけない。仲間が次々と死んでいき、親しかった兄貴分が死んだときに、ついに祖父は逃げ出した。満州人の助けもあり、女装して長春にたどり着く。
祖母も満州まで働きに来て女給をしていて祖父と出会った。祖父の面倒を見ていた映画会社の保田の連れできた。

保田が出征し戦死したとき、祖母は保田の子を身ごもっていた。そんな祖母を引き取ったのが祖父。恋愛感情はなかった。

終戦を迎え、日本に帰ろうとした時、二人をかくまってくれていた満州人に子供を譲ってくれと頼まれながらも泣いて断り帰国の途についた祖父母。途中でその息子と次男も亡くしてしまう。三人目の子が良嗣の父親。

現在の家族の問題を語るなかに、過去の祖父母の人生がフラッシュバックのように語られていく。
結局は、祖父母の人生は逃げてばかりだったが、わけがわからないものに無自覚に流されるよりは、自分の意思で時には逃げる方が正しいのだと、祖父母の人生は教えているのか。