駅の北にある丘の上に建つ松ノ内家。先祖代々の和風家屋を先々代の主、清之介がモダンに改築した屋敷。代々輸入食品を扱う商社を経営する。屋敷には今、前社長の貞夫、息子で社長の孝之、妻郁子、中学一年の娘琴美の四人暮らし。

ある日、その屋敷を訪ねてきたイケメンの若者西島。日本の文豪として知られている楢崎の孫だと名乗る。楢崎は若い頃、清之介と親交があり、三十歳の時に、一年間だけ、この屋敷に居候をしていた。生涯を通じて、小説や随筆を書き続けた楢崎だが、なぜかこの一年だけは作品がなく空白の一年として知られている。
その一年の楢崎の消息、何かを書いたのなら原稿が残っているかもしれないから、探してみたい。協力を願いたいと言う。

渋る隠居の貞夫に頓着なく、気軽に引き受けた孝之。宿を決めていない西島のために、空いている部屋を提供するとまで言ってしまう。

世界的な文豪の未発表原稿が見つかれば、大金が手にはいるかも。社長職を継いだものの、何かと会長である父や古参の役員に阻まれていると感じていた孝之。一度業績不振の建て直し策として提案した企画で危ない目に遭って以来、彼の発言権は薄れ、新規の企画の立ち上げもままならない。大金があれば、そのきっかけになるかもしれないと、西崎に協力し原稿探しに積極的な孝之。楢崎が居候していた頃、小学生で接した貞夫はぼんやりした記憶しかない。

清之介の遺品の中に見つかった原稿。そこでは、清之介の妻トミとの不倫が描かれていた。家族の恥を公にさらすのを嫌う貞夫と、金に目がない孝之の対立は、妻との仲にもひびを入れる。

原稿を見た西島はなぜか、まだ足りないと言う。楢崎に心酔する同級生と楢崎を調べていた琴美は、残されている楢崎の断片的な文章から、広大な庭のどこかにもうひとつの原稿が埋められていると推測。記憶をよみがえらせた貞夫が指し示す庭の一角に、原稿が見つかる。

しかし、最初に見つかった原稿は内容が不穏だが文学的には優れているが、あとで見つかった方は内容は常識の範囲内だがつまらない。

楢崎の文才を期待していた清之介は最初の原稿はつまらないとけなし、書き直させたと言う。
すると、不倫を描く原稿が書き直したもので、内容は事実を昇華したフィクションだったのではないか。それを納得できたとき、松ノ内家の混乱は治まる。

つまらないわけではないが、読んだと言う実感が薄い話だった