以前シリーズ第二作第三作を図書館本で読んだが、なぜか第一作が図書館になく、古本文庫で買い求めたものの、長らく積んだままだったのをようやく読了。やはりいい。大倉さんは多彩なシリーズをいくつも書いていて、結構好きな作家なんだが、すべてを読んではいない。デビュー作の落語雑誌の編集長と新米女性編集者が探偵となるシリーズ、女コロンボと言える福家警部補シリーズ、大学の落語クラブのシリーズはほぼ読んでるが、最近次々と出ている山岳ミステリーのシリーズは一冊読んだかどうかぐらい。
多彩な作品のもとは著者の多彩な趣味が高じてできたといえる。巻末の解説によると、小鳥を飼うのも趣味のひとつで、はじめ四羽ではじめた十姉妹はいまや七十羽まで繁殖し、それらをすべて世話していると言う。
本作の巻頭の一話はこの趣味から生まれたと言える。

警視庁捜査一課のベテラン警部補だった須藤は、頭部を銃撃されて一線を退くが、移動を拒否したために、リハビリルームと言われる閑職の総務部総務課に異動。秘書にパソコンの手解きを受けていた。そんな彼のもとにやってきたかつての同僚でライバルだった石松警部補が仕事を持ち込んできた。総務課は正式には総務課動植物管理係といい、犯罪により飼い主がいなくなったペットの動植物を保護するのが役目。
石松警部が持ち込んできたのは容疑者が飼っていた大量の十姉妹の保護と世話の依頼。この係には須藤の他にもう一人専属の係員がいて、それが警察博物館の最上階に部屋を持つ薄圭子。獣医の資格などを持ち、動物園などでの経験もある動物のエクスパート。人よりは動物に関心を持つ彼女は、その分常識的な会話や言葉がお粗末で、須藤との会話の食い違いがユーモアとして描かれている。

全四話で扱われている動物は、十姉妹、ヘビ、巨大なリクガメ、そしてフクロウ。動物を保護世話するために、事件にもタッチし、そこに見いだした違和感や間違いをきっかけに、圭子は事件の真相を鮮やかに解明する。そんな展開で話は進む。事件を解決しても手柄は担当する刑事に持っていかれてしまうが、圭子は気にしない。最初は気分がよくなかった須藤もいつか圭子の魅力にはまっていくようで、なかなかいいコンビとなる。
事件捜査に須藤を関わらせたのは、実は管理官である鬼頭。いくつかの事件解決のあと、須藤の現場復帰を伝えてきた彼に、須藤は圭子が無視されるのを我慢できず、捜査現場への復帰を断る。