著者はイギリス北西部生まれの孤児。養母の英才教育により、十二歳で説教師になるも、十五歳で同性と恋愛関係になり、追放。様々な職で自活し、独学でオクスフォード大に入学。そんな数奇な自伝的要素が濃い『オレンジだけが果物じゃない』という作品。一時批評家たちの非難を浴びた彼女は、執筆が恐怖の対象になる時代を経て、執筆された本作。執筆、物語ることが彼女の人生と言える。

スコットランド北西の涯、大西洋に望むケープ・ラス近くの港町ソルツで暮らす十歳の少女シルバーと母親。フラりたちより去っていった男に妊娠させられた母親は家族から追われ、崖っぷちに斜めに突き刺さるような家で二人暮らし。命綱で繋がれた生活も母の転落死で終わり、シルバーは孤児となる。そんなシルバーを引き取ったのがケープ・ラスの灯台守ビュー。灯台守見習いとして不思議な盲目の老人と灯台で住み始めたシルバー。
灯台の光を保守するのと同じくらい灯台守にとって大事なことは、物語を語ることだとビューはいう。どの灯台にも物語があり、船乗りによって覚えられ伝えられると。ビューの語る物語を聞き、自分でも話すことがシルバーの見習い修行のひとつになる。

そして物語られるバベルの生涯。灯台を建設した商人の息子で、ソルツの町で牧師となった息子のバベル。百年前に生きた男の物語をビューは自分が見たかのように話す。

彼の友人であった作家スティーブンスンが書いたジキルとハイドの物語のようにバベルは二重人格を持ち、二重生活をする。恋人の愛を信じられず別れて牧師となったバベルは、再会した彼女と別の町に所帯を持ち、年に数ヵ月だけ別の男として過ごした。やがて秘密がばれ、そちらこそが真実の生活だと思っていた愛人と別れて、牧師生活を続けたバベル。

灯台が自動化されることになり、ビューは追い出され、シルバーはビューのあとを追い、灯台に代わる絆を求めて旅に出る。

バベルの生涯とシルバーの旅の過程が対照的に描かれていく。

たぶん灯台は物語と同じような存在だと著者は考えるのだろう。物語ることで人は救われる、そんなメッセージがあるのかもしれない。

物語なのか、現実のシルバーなのかはっきりわからないところもあり、少し戸惑うし、よくわからない作品だった。