サブタイトルに、「謎に刺す鍼、心に点す灸」とある。以前に読んだ作品の続編。

鍼灸学校を出て、三療と呼ばれる三つの資格、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師を取って、鍼灸師となった真奈が、押し掛け助手として、鷹野鍼灸院に勤めはじめて二年目の様子を描いている。院長の鷹野は往診ならぬ往療に出掛けていることが多く、新米の真奈が患者の相手をすることになる。院長は詳しい説明をしないため、真奈はあれこれ悩みながらも患者の対応をするはめになる。しかも心優しい真奈は、患者の話に引き込まれやすく、そのために厄介ごとに巻き込まれることも多い。たまに在院中の鷹野が真奈の話だけで、的確に患者の不調の原因を明らかにしたり、治療以外のことで真奈が巻き込まれた問題に、鮮やかな結末をつけるのも鷹野院長。いわば鍼灸ミステリーの探偵とも言える。

今回は五つの話で構成されている。かつてテレビにも出ていた漫才コンビの片割れが治療に訪れ、相方に捨てられたり事務所から追い出された患者に同情する真奈。小児ガンで入院したことがある真奈が、世話になった病院で患者の少年の父親として、相方に遭遇し、コンビの仲直りに奔走する。

交通事故で四肢が麻痺した夫と、モラハラされている妻と知り合った真奈。

同じ悪夢を見るようになった外人鍼灸師。

認知症で家族もわからず、ホームで暮らす老婆。腰に折れた鍼が残っていることと、よく口ずさむ歌や夫と東京オリンピックの開会式に行った思い出を手がかりに、真奈はお節介にも老婆の身元や家族を探そうとする。

真奈のゆくところ様々な問題に巻き込まれる。口では彼女のお節介のせいだと怒るくせに、知恵を絞って真奈を助けようとする鷹野院長。

小児ガンから回復した真奈だが、実は片足は義足。父親は個人タクシーの運転手。院長は師である高名な鍼灸師の娘と一緒になったものの,離婚して独り暮らし。死病にとりつかれ、手術をいやがる師をなかば強引に入院させてしまった。そして死亡。鍼を使っても治ったとは思えないが、鍼灸師の師を病院に委ねたことを今も悩む。鍼は万能ではない。死病が明らかならば病院に任せるのも間違っていないと、思ってはいても今も後悔している鷹野院長。

体に触れることで、治療と共に、心までも解きほぐす鍼灸治療。