結局最後まで読んだが、以前に読んだことがあったかどうか判然としない。

北森さんが未完のまま亡くなったあと、公私共にパートナーだった時代小説作家の浅野里沙子さんが、蓮杖那智シリーズの初の長編『耶馬台』を完成させた。それに引き続いてシリーズの短編集として出たのが本作。

全六編のうち、最初の二編は長編以前に北森氏により書かれ、発表されてなかった作品。またタイトル作は、北森さんがテレビ放映第二作のために、自ら脚本を書きはじめていた作品。といっても残された構成のメモはわずかしかない。それを完成させ、さらに浅野さんが書き上げた三篇で、一冊になった短編集。

東北の村に伝わる鬼哭念仏といわれる祭祀の最中に起こった殺人事件を扱う「鬼無里」。

市民講座、都市記号論のフィールでワーク中に起こった駅での転落事故の真相をあばく那智先生の「奇遇論」。

中部地方の村の高名な家で祀られている市松人形。ひんな神なのか。その前に殺された村人の持ち物が置かれていた。果たして犯人は誰か。「祀人形」。

宮崎県のとある村に残る補堕落渡海に由来する祀り。今は一晩だけ沖合いで過ごすと言う変化をしている。誰も密かに近づけない沖合いの船で殺人事件が起こる。「補堕落」。

明らかに偽書と思われる独自の神話をもつ山奥の天鬼村。宮司を中心に、三地区をまとめる三家が仕えている村。そこで起きた殺人事件の被害者はなぜか各地区平等に割り当てられたかのよう。事件の背景にあったのはダム工事の賛否の対立だった「天鬼越」。
三重県の内陸部の都市名張。古い旅館に残るはまぐりの絵。蜃気楼のような情景に隠された意味は。画家が執心した旧家の美人は実は兵役逃れに女装したキリシタンの跡取り息子。それを看破し画家に教えて諦めさせたのは、当時同宿していた江戸川乱歩だった。

北森さんのオリジナルと浅野さんのオリジナル、違いは私にはわからなかった。これでシリーズは終わりなのかどうか?浅野さんが引き続いて書き継ぐのかどうか?