新酔いどれ小藤次シリーズ第四作。昨夜読み始めたら最後まで一気に読んでしまう。気がついたら深夜一時半。こんな遅くまで読んだのは久しぶり。やはり好きな作家作品だと違うのかな。

第三作で長屋の差配の娘夕の代参をささえて、身延山詣でをした小藤次一家が江戸に戻ってからの出来事。今回は特に凶悪な悪人が登場するわけではなく、幼い頃から長屋で共に育ち、姉弟のような関係の夕と駿太郎が主役。

長年名人と言われる彫金職人の父親を見てきたからか、夕は働きに出る年頃になり、女ながら職人になりたいという。できれば父と同じ道を歩みたいと願うので、父が娘を弟子入れさせてくれる親方を探したものの、女を受け入れてくれるものはなく、結局は父に弟子入りすることになる。父ではなく親方として仕える決意はあるものの、同じ自宅にすみ暮らしていることで、愚痴を言ったり気を張らす場所がないために、夕に元気がなくなる。心配した長屋の連中や小藤次がいろいろ考えてやる。
結論は、夕は共に旅したことや駿太郎との関係から、言わば家族同様。ならば月に一度藪入りのように小藤次やおりょうのもとで一夜を過ごすことになる。好意を受けてもはじめは納得しない夕を説得したのは駿太郎。おりょうの弟子から出生の秘密を聞き動揺した駿太郎を落ち着かせたのは夕だった。言わばそのお返し、というより姉と弟の愛と言うべきか。
駿太郎に出生の秘密を知られた小藤次は、それを機に駿太郎に実の両親のことを知らせ、さらに今はなき二人の墓所を探し始める。
そして母親の遺髪が故郷の小さな寺に埋められていて、遺品の一部がもたらされる。

さらに小藤次の刺客として雇った赤穂藩の知り合いにより、駿太郎の父親の墓所も見つかる。意外に近い貧しい寺に埋葬されていた。卒塔婆だけの簡素な墓だが、回りの風景が案外よい。ならばこの地に石碑をたてようと思い付く小藤次。山荘付近の捨てられた庭石を使い、小藤次駿太郎で文字を彫りたてることになる。駿太郎は一時的に石工に奉公して習う。

そしてついにできあがった石の墓。駿太郎は骨になった父の傍らに、母の身に付けていた遺品をそえて埋める。身分違いながら結ばれ、我が身をとして息子を残した二人に小藤次らは瞑目する。

小藤次のもとに旧藩から二人の弟子ができ、駿太郎と兄弟弟子となる。彼らがいかなる事件に立ち向かうのか楽しみだな。