イギリスの児童文学者、歴史小説家サトクリフの十七世紀イギリスが舞台の歴史小説。

いわゆる市民革命で断頭台の露と消えたスチュアート朝のチャールズ一世。クロムウェルによる共和制を経て、王政復古したのはチャールズ一世の息子チャールズ二世。さらに弟のジェイムズ二世に引き継がれた王国軍で騎馬隊を率いた勇将クレイバーハウス。彼をテーマにした歴史小説。名誉革命でオランダから迎えられたウィリアム三世に従うことを名誉にかけて拒否した彼は、フランスに亡命したジェイムズ二世がアイルランドから本土を狙うのを助けようとして、不毛の戦いを繰り広げ、ついには戦場で生をまっとうする。

話の語り手は少年ヒュー。放浪の画家と家を出て一族から見放された少年は、両親の死後、祖父に引き取られたものの、一族にみなぎる信仰の自由を求めるコベナンターに相容れない思いを抱いていた。彼らに敵対し嫌われている王軍の将軍クレイバーハウスに興味を覚える。
近所の屋敷の馬番に雇われたヒューは、主人の孫娘に気に入られ、彼女がクレイバーハウスと結婚することで、一緒にその屋敷に移り住む。育ててくれた祖父に仕込まれた馬の扱い、放浪画家の父のそばにいて覚えた画家の仕事と絵の素質。二つの才能をいかせば幸せな一生を送れたのに、将軍への憧れを諦めきれずに、言わば敗将の後半生に付き合うと言う波乱に富む生活を送る。

将軍の死後、アイルランドのジェイムズ王に付き従い、フランスに亡命し、フランスの傭兵となり、片腕を失う。将軍が結婚したときに肖像画家から誘われたことを思いだし、オランダに向かい画家の勉学を始め、将軍夫人の側に仕えていた恋人と再会し、やっと結ばれる。年老いたヒューが、悪人呼ばわりされる将軍の真実の姿を伝えようとして話すという体裁になっている。

王朝の系図や地図もついているが、本文で語られている地名が地図上で見つからず、なんとも不親切に思えた。

この時代のイギリスはなんとなく敬遠していたが、やはり複雑な展開で手に負えないな。誰に、どの王に感情移入したらいいのか。スチュアート朝の王はあまり好きにはなれないし、それに敵対するものも好きとは言えないし。

居場所を求める孤独な少年が一人の将軍の生涯に関わることで、自分と向き合い、他者を知り、一人の人間として成長していく話としてなら結構よかったかな。