サブタイトルに、ダイアナ・ウィン・ジョーンズの回想、とある本書は、1978年から2008年にかけて書かれたダイアナの文章や講演録から、ダイアナ自身が選び出し、構成したエッセイ集。

イギリスでファンタジーの女王と言われるほど、三十作ほどの作品を残して、2011年に他界した。
人気のわりには、いわゆる児童文学やファンタジーの受賞作が少ないのは、それだけ彼女が特異な作家だった証しともいえる。幸いなことに、日本ではジブリ映画の成功もあって、主要作はすべて邦訳されていて、簡単に読める。

彼女は半生を回想して、その不幸な生い立ちをのべると共に、それがいかにして作品に昇華されていったか、なぜファンタジーと言う形をとったかについて、のべている。自身の作品を取り上げて、執筆の過程を詳細にのべることもあれば、そこに埋め込まれた神話や伝説などに触れたり、主人公たちの造型過程をも明らかにしている。個性的な主人公たちや登場人物が、次第に複雑な状況のなかに入り込み混乱しながらも、最後には一気に解決し、読者にカタルシスを与える。そんな複雑な展開をどうやって書いたのかについても、いくつかのエッセイなどで触れている。

児童文学の創世記から書き始めたダイアナは、はじめは女性が作家となること、児童文学を書くこと、ファンタジーを書くことへの、彼女自身の両親や親族など、さらには世間の批判的な言葉と戦わなければならなかった。児童のためになる作品はどんなものであるべきかに対する彼女自身の信念を曲げることなく、貫き通してきた。その面で世間や同業者からの認知を受けることが遅くなったのかもしれない。
ファンタジーは人が生きていく上で大切なもので、子供に経験を与えるために書き続けた。逆に安易にそれによって子供の成長を描くことには否定的だった。放っておいても子供は成長する、わざわざ教える必要はないと。

彼女の幼少時の不幸な生い立ちは、驚くべき体験で印象的。両親にネグレクトされた三姉妹、彼女らが曲がりなりにも成人したことは奇跡的にも思える。あの作品のあれがこれかと思い出すエピソードもいくつかあり、興味深い。大体の作品は一読しているものの、いつか再読してみたい気もしてきた。死んでもまだまだ忘れられない作家と言える。