著者はイギリスの児童文学界を代表する作家で、数々の賞を受けている。

この物語は第一次大戦時に実際に起こったドイツ潜水艦によるアメリカの豪華客船への魚雷攻撃による沈没を背景に描かれたフィクション。

イギリス南西部のコーンウォールの沖、アイルランドの南に点在する島々シリー諸島。その一つの島に住む少年アルフィーと父親ジムは不漁の穴埋めにと、普段漁師が近づかない呪われた島セント・ヘレンズ島に向かう。かつては死病などの患者を隔離していて、今は無人の島で、親子は少女を発見。瀕死の少女はわずかにルーシーとだけしか言葉を発しない。だから彼女の名前だということになる。親子は自宅のある島に少女をつれていき、隣の島の医師を呼んで介抱する。言葉を話さない少女の身元はわからず、伝説の人魚だと騒ぐものもいる。しかし、アルフィーと両親は家族同様に彼女に接し介抱を続ける。やがて体の方は回復し、元気になったが、記憶がないのか心に蓋でもしているのか、少女はなにも言わない。医者が持ってきた蓄音機に反応し、モーツアルトのピアノ曲が好きだとわかる。さらに彼女はピアノが弾けることや馬になれていることもわかる。そのおかげで周囲にも暖かく迎えられていたが、発見時に持っていた毛布にドイツ語の名前があったことから、当時の敵国のドイツ人と疑われ、周囲に無視されたり、アルフィー一家が村八分になったりする。
物語には途中からアメリカ人の少女メリーの話が割り込む。メリーの父は当時中立していたアメリカに住みながら、志願してヨーロッパに渡り従軍、怪我をしてイギリスの病院に収容される。メリーと母親は周囲の反対を押しきって、イギリスへ渡り、父のもとへ行くことにして、客船に乗り込む。それがドイツ軍により撃沈し、メリーは救命ボートへ。やがて彼女は客船から落ちたピアノの上にいるところをドイツの兵士に発見され救助される。昔遭難したドイツ人を助けたことで知られたシリー諸島。ドイツ軍もこの周辺だけは攻撃が禁止されていた。そこならすぐに助け出されると考えたドイツ兵がメリーをとある島に置いて去った。それが無人島だった。助けてくれたドイツ兵がやはり遭難したことで、メリーと再会。ルーシーこそメリーだとわかる。それとともにルーシーは言葉を取り戻し、記憶も戻り、自分の身元や遭難の経緯を話せた。ミステリーめいた謎解きと島民の暖かさ、戦争と個人の問題が感動的な話だった。