前に読んだ『ヴァイオレットがぼくに残してくれたもの』の著者ジェニー・ヴァレンタインの作品。
十七歳の少年サムが田舎の家からロンドンに家出してきた。消えてしまいたいと言うだけで、理由はわからない。家から持ち出した金があり、最初はホテル住まいだったが、やがて場末のアパートに住まい、バイト先も見つける。しかし、ふだんは部屋に閉じ籠り、アパートの住人とも顔を合わさないでいた。

アパートに来る途中街角で、一人の赤毛の幼い少女が黒い壁の前に立ち尽くし、まるで絵画のような印象を受けた。その少女がボヘミアという名前の同じアパートの住人だとわかったのは、一階に住むおばあさんイザベルのおせっかいのおかげ。汚れた廊下の壁を塗り直す相談という名目で、地下室に住む大家スティーヴや三階のミック、四階のチェリーを自分の部屋に呼び集めた。少女ボヘミアはチェリーの娘で十歳。酒や薬に溺れ、男を渡り歩くチェリーは、娘を放置していたが、娘はそんな母を嫌がっていても愛している様子。
自分のことを話そうとせず、部屋にこもりきりのサムにあれこれ聞いてくるイザベルに閉口しながらも、言われるままボヘミアの相手をしているうちに、二人は奇妙な友情を感じ始める。
唯一サムが話した田舎の親友マックスのこと。アリの研究で学者肌のマックス。研究書を彼にもらったものの読まなかったサム。
ささいなことでサムと喧嘩をしたボヘミアは、その本を盗もうとして、間に挟まれた大金を見つけ、家出をする。本に署名されてるマックスの家を目指して、一人遠距離の旅に出る。自分が家出しながら、両親の心配を気にしてなかったサムもチェリーも、ボヘミアの失踪でようやく気づいた、理由もわからずに残されたものの気持ちに。
機転を利かせて、どうにかマックスの家にたどり着いたボヘミアは、サムの家出の理由と彼がなした悪事を知ることになる。親友の振りをして、マックスを誹謗しいじめ孤立させたのはサムだった。しかもマックスが修理した車を強引に運転して事故を起こし、助手席のマックスに瀕死のけがをおわせた。さらに今までの悪行が小さな町に知られてしまい、町を家を出た。今のサムが改心し、ボヘミアたちに親切な人になっていることを説明して、彼を弁護するボヘミア。マックスの家からイザベルに電話して、心配してるアパートの住人たちに居所を伝えると、全員が車で迎えに来てくれる。ママのチェリーも心を入れ換える。
迷子のような変人たち。