なんとも奇妙な話で、途中で何度か中断したくなったにも関わらず、最後まで読んでしまった。
ユーモアたっぷりのミステリー小説。

十六歳のルーカスが主人公。終始彼の独白で話が進むので、まるで彼が読者に向けて、真面目なおしゃべりをしているような感覚に陥る。

深夜友達の家から帰ろうとタクシー会社の配送センターに足を踏み入れたルーカス。棚の上に置かれた木箱に目が止まる。それは骨壺だった。タクシーに置き去りにされていて、長いこと殺風景なその事務所に置かれていた。そこから死者から声をかけられたような気がしたルーカス。ヴァイオレットという名前が書かれたカードがあるきり。一度は気になりながらも帰宅した彼は、今は近くのホームに暮らす祖母に頼んで、親族を名乗り、その骨壺を引き取る。

十歳の頃に彼の家族をおいて失踪した父。訳もわからず悩む母。夫のことを忘れたくても生き写しで、最近は父の残した服を着ているルーカスが目の前にいることに悩む母。二十歳前に父と知り合い、娘を妊娠したことで結婚したものの、直後から後悔していた母親。弟がまだ腹にいるときに失踪した父を弟は全く知らない。父の両親である祖父母はルーカス一家に家を明け渡して、近くのホームに入居している。半分ボケてきた祖父と、何にでも苦情を言いたがる祖母。父の友人で、母に気があるボブが何かと家族の世話をしてくれる。記者として裕福だったボブは今は薬物中毒で最低の暮らしをしている。

骨壺の死者であるおばあさんが気になるルーカスは、偶然、彼女の名前を映画のクレジットで見つける。ゴーストピアニストだった。手と演奏だけで映画に出演している。改めて調べると、タスマニア出身のピアニストで、人格的にはあまり評判がよくない。やがてそのピアニストと父が親しかったとわかる。記者としてインタビューしたことがきっかけで、何度かあっていた様子。鬱になった母は、家から父に関するものをすべて放棄することに決める。その際に見つけたテープをルーカスは密かに隠し持つ。それは父がピアニストにインタビューした記録。その最後に彼女の自殺を手伝ってくれないかと父に頼んでいた。父は自殺に手を貸し、失踪したのか。ピアニストはそのテープの中で、独身なのに架空の息子をつくりあげて話のネタにしたという。彼女の死後、その息子が全財産を相続したという。ではそれが失踪した父なのか?ルーカスは手紙を書く。